リーガル

記事番号:T00049035
2014年3月10日15:51

一. はじめに

 中国の日系企業の中には、派遣会社から労働者の派遣を受ける企業があります。この点、2012年12月末に労務派遣を中心に労働契約法が改正され(以下「改正労働契約法」といいます)、さらに同改正を踏まえた労務派遣暫定規定(以下「本暫定規定」といいます)が公布されました。14年3月1日から施行された本暫定規定において、日系企業が注意すべき主な内容について、以下で解説します。

二. 本暫定規定の概要

1. 労務派遣の補助性の明確化

 労務派遣を「臨時的、補助的または代替的」な業務で実施することは、改正前の労働契約法でも規定されていました。しかし、社会保険の納付などの事務手続を軽減するなどの理由から、長期に雇用する労働者についてまで労務派遣を利用する企業が多く、この文言は骨抜きになっていました。

 そのため、改正労働契約法では、臨時的、補助的などの内容が、以下のように詳細に規定されました(同法第66条)。

(ア)臨時的業務:存続期間が6カ月を超えない業務
(イ)補助的業務:主要業務の職務に役務を提供する非主要業務
(ウ)代替的業務:派遣先の労働者が、就学、休暇などの理由により業務を行うことができない一定期間、他の労働者により代替が可能な業務

 もっとも、(イ)の「主要業務」と「非主要業務」については、各企業の判断に委ねざるを得ず、乱用の恐れがありました。

 そこで本暫定規定では、「補助的業務」の内容については、最初に労働者代表大会もしくは全労働者と討議した上で試案および意見を提出し、次に労働組合もしくは労働者代表と協議した上で確定し、派遣先企業内で公示することが義務付けられました(同規定第3条第3項)。

 当該手続きに違反した場合、是正命令、警告を受け、また派遣労働者に損害が発生した場合には、派遣先企業は賠償責任を負うものとされました(同規定第22条)。

2. 派遣労働者の総数規制

ア 総数規制の内容

 これまで派遣労働者の採用人数に関する制限がなかったため、社内のほとんどの労働者が派遣労働者であるという企業もありました。そこで、改正労働契約法では、企業が採用する派遣労働者の総数規制を設けることが規定されました。
具体的には、派遣労働者の総数が、派遣先企業の労働者総数(直接雇用労働者と派遣労働者の合計数)の10%を超えてはならないことが明記されました(同規定第4条)。

イ 経過措置

 上記のように、派遣労働者の総数に上限規制を設ける一方、各企業への影響を考慮して、本暫定規定の施行日から2年間(16年2月末まで)は、現在の派遣労働者総数につき10%を下回る人員調整案を作成することで、徐々に派遣労働者の割合を減らすことを認める経過措置を定めました(同規定第28条第1項)。
また、派遣先企業が上記人員調整案を現地の労働部門に届け出る必要がある他、10%の上限を超えている派遣先企業は、上限である10%を下回るまでは新しい派遣労働者を採用してはなりません(同規定第28条第2項、第3項)。

ウ 違反した場合の法的責任

 総数規制については上記の経過措置が認められたため、本暫定規定で要求される手続を経る限り、経過措置期間中、10%の上限を超えても罰則などは科せられません。

 しかし、総数規制自体は改正労働契約法の要請であり、本暫定規定第20条では、派遣先企業が労働契約法の労務派遣に関する規定に違反した場合、同法第92条の責任を負う旨が規定されています。そのため、仮に本暫定規定で要求される手続きを経ないまま10%の上限を超えた状態を維持すると、同法第92条に従って、是正命令が下され、1人当たり5,000人民元以上1万人民元以下の罰金が科せられ、さらに派遣労働者に損害を与えた場合、派遣会社と連帯して賠償責任を負わされる可能性があります。

3. 派遣会社の破産などにより労働契約が終了する場合の処理

 派遣会社の破産などにより労働契約が終了した場合、派遣先企業は派遣会社と協議の上、派遣労働者を「適切に配置」しなければなりません(本暫定規定第16条)。この「適切に配置」の内容については、各地域の労働部門への問い合わせでも明確な回答は得られていません。もっとも、その解釈しだいでは派遣先企業に重い負担が生じる余地があります。そのため、日系企業としては、労働者の派遣を受けている派遣会社の経営状況についても、目配りする必要があります。

三. 今後の留意点

 中国の国有人材派遣会社である北京外企人力資源服務有限公司(FESCO)が13年に実施した調査によれば、現在までのところ、国有企業の約47%、外商独資企業の約38%、合弁企業の約35%が、10%以上の労務派遣を利用しているとの報告もあります。

 従って、本暫定規定の企業への影響は、日系企業のみならず中国に存在する企業全体に及ぶものと言えます。今後、日本企業としては、約2年間の経過措置期間の間に、直接雇用や業務委託への切り替えなど、派遣労働者の取り扱いの再検討を迫られるものと言えます。 

コラム執筆者
黒田法律事務所 
安江義成弁護士
竹田昌史弁護士
謝均中国弁護士

黒田法律事務所・黒田特許事務所 
1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

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