リーガル

記事番号:T00049545
2014年4月3日15:36

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の顧問の佐田友です。今日は、台湾で最近一番ホットな話題といえる学生らによる立法院占拠について書いてみます。

 3月30日の日曜日には、中台サービス貿易協定に反対の意を表するため多くの人が総統府周辺に集結しました。参加者については警察は約11万人、主催者側は約50万人と発表しており、ずいぶん開きがあるため本当のところは分かりません。

 サービス貿易協定についてはワイズニュースで何度も説明されているので詳しくは触れませんが、昨年6月に中国と台湾の間でサービス分野の市場開放を目指すべく、中国が80分野、台湾が64分野を相互に開放することが取り決められました。具体的には、旅行業、クリーニング、美容関連サービス(散髪など)、建築や関連工事などが対象となっています。

中小企業の切り捨てにつながる?

 台湾には中小企業が多く、サービス貿易協定が発効となれば、これらの中小企業が担ってきたサービス分野に資金力の豊富な中国大企業の進出を招き、その結果、台湾の中小企業の切り捨てにつながるのではないかと危惧する声は筋としては理解できます。

 仮に、読者の皆さんご自身が日本で中小企業を経営していると考えてみてください。そして、日本のすぐ隣に、毎年8%近くの経済成長を続け、日本語を話す十数億の人口を有する国があり、その国に市場を開放するという状況を想像してみれば、少しは今の台湾が直面する状況が理解できるかもしれません。

 ただ、3月30日にあれだけ多くの市民が総統府周辺に集結したのは、馬英九政権の不人気に加えて、サービス貿易協定の批准に向けたプロセスが拙速であったことが大きいでしょう。

 聞くところによると、馬総統は台北市長時代は特に不人気ということもなかったようですが、現在の支持率は約9%とかなり低く、馬総統を支持するという人の声はあまり聞かれません。低支持率の理由の一つに、馬総統があまりに中国寄りということもあるようです。

学生に好意的なメディア

 私が台湾のテレビのニュース番組を見る限り、メディアはサービス貿易協定に反対する学生を好意的に報道しているような印象を受けます。中には今回の学生運動のリーダーである林飛帆氏と、もう一人のリーダーの陳為廷氏との間で「反服貿王子(サービス貿易協定は中国語で『服貿』で、『服貿』に反対するので『反服貿』)はどっち!?」などというアンケートもあり、ちょっと笑える報道でした。まあ、日本でもワイドショー番組なら同じような企画をやりそうですね。

議論を尽くす必要性

 日本でも環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に参加するか否かで同様に大きな議論が続いており、「コメ」という聖域を確保しながらTPPに参加できるかという点はまだはっきりしませんよね。結局、何かを得るためには、少なくない痛みが伴うものでしょうから、全ての人が納得できる結論などというものは存在しないと思います。

 最終的に、その国がどのような方向性を目指すかというところからよく議論しないといけない問題だと思います。そして、仮に市場開放を進めるにしても、見直しや市民・企業経営者の「痛み」を緩和する方策などがなければ、最終的に「競争原理だから、競争で負けた者は市場から去るだけで仕方がない」で済まされてしまうと思います。

 台湾の今回のサービス貿易協定の問題は、結局のところ、中国との政治的関係をどうしていくのかにもつながる問題であり、台湾人にとっては非常に敏感な問題ですよね~。今後も立法院占拠の問題から目が離せません。 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。