リーガル

記事番号:T00050244
2014年5月12日15:43

 2014年4月27日午後、2万人以上の台湾住民が台北市内の総統府前の凱達格蘭(ケタガラン)大道に集まり、デモ活動を行った。主な要求事項は1)第4原子力発電所(以下「第4原発」)建設の即刻中止、2)「『鳥かご』住民投票法」の即刻改正である。

 住民投票法第2条第2項の規定によれば、台湾住民は「法律の住民投票」、「立法原則の発議」、「重要な政策の発議または住民投票」および「憲法改正案の住民投票」という4つの事項について全土的な住民投票によって決定することができ、建設中の第4原発の建設を中止するか否かの決定は「重要な政策の策定または住民投票」に該当する。これまで第4原発を支持してきた与党国民党も住民投票によって第4原発の今後を決定することを主張している。

 しかしながら、住民投票法第30条第1項には「住民投票案件の投票の結果、投票者数が全土、直轄市、県(市)の有権者総数の2分の1以上に達し、かつ有効な賛成投票数が2分の1を超える場合、可決となる」と規定され、同条第2項には「投票者数が前項に規定される人数に満たない場合または有効な賛成投票数が2分の1を超えない場合、いずれも否決となる」と規定されている。この規定により、住民投票において可決される可能性は極めて低くなっている。

 たとえば、与党が現在設定している「第4原発の建設停止に同意するか」という住民投票の議題を例に挙げると、メディアの世論調査によれば、第4原発の建設に反対している台湾住民は現在60%を超えているが、住民投票権を有している台湾住民の多くが中国など、海外に居住しているなどの要因により、これまで実施された6回の住民投票の投票率は最高でも45%であり、いずれも否決と見なされた。つまり、現実には投票率が有権者総数の2分の1以上を超えることができない状況において、与党の議題により住民投票を行っても、可決されることはほぼあり得ず、否決とみなされることになる。

成立困難、誘導も可能

 ここから分かる通り、台湾の住民投票制度は、形式上、民意を尊重する民主的な制度であるが、可決となる条件が非常に厳しく、また、議題設定者は住民投票で問う問題を「肯定形」または「否定形」で設定することにより実質的に住民投票の結果をコントロールすることできる。この状況は、羽があっても鳥かごに入れられると飛ぶことができない小鳥の状況に似ているため、台湾の住民投票法は「『鳥かご』住民投票法」と呼ばれている。

 もともと台湾住民は第4原発にそこまでの関心はなかったが、高度な技術力を有する先進国である日本でさえも原子力発電所のリスクを完全には制御することができなかったことが分かってから、第4原発の建設続行に反対する人が増えた。現在、台湾において第4原発をどのように処理するかは重大な問題であり、今後の動向に引き続き注目が必要である。 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。