リーガル

記事番号:T00051065
2014年6月23日15:38

  会社法第189条には、「株主総会の招集手続きまたはその決議方法が法令または定款に違反する場合、株主は決議の日から30日以内に、裁判所に対しその決議の取り消しの訴えを提起することができる」と規定されている。台湾高等裁判所の2013年上字第855号判決は、会社が指定した株主総会の開催場所が不適切であるか、または招集通知に開催場所が明確に記載されていない場合、株主総会の招集手続きに違法があるとして、当該総会の決議を取り消せるとの判断を示した。

招集通知にビル名記載なし

 本件の概要は以下の通りである。

 原告Xは被告Y社の株主であった。Y社は長年にわたり株主総会を開催しないまま、董事および監査役の任期が満了した。しかしY社は株主総会を再度招集して董事および監査役を改選しなかった。

 主管機関はY社に対して株主総会を招集することを命ずる通達を出し、Y社は株主に対して株主総会の招集通知を送付した。Xは、招集通知に記載された日時に、同通知に記載された場所に行ったが、会場には誰もいなかった。

 招集通知には、株主総会の開催場所の住所が記載されていたが、ビル名は記載されておらず、Xは「Aビル」で開催されると思っていた。しかし、Xは株主総会の開催後に、Y社が「Bビル」にて株主総会を開催したことを知ったため、Y社に対して訴えを提起した。Xの請求は以下の2点。

1)主位請求:株主総会の不成立を確認する。

2)予備的請求:株主総会は招集手続きに違法があったため、株主総会の決議の取り消しを請求する。

不明確な場所記載は違法

 Y社は、株主総会は実際に開催されたので、Xの請求には理由がないと主張したが、第一審の新北市地方裁判所の2012年訴字第2227号判決は、Xの予備的請求のみを認め、株主総会の決議は取り消された。判断根拠は以下の3点。

1)Xは株主総会が成立しないと主張しているが、株主総会は確かに招集通知に記載された開催場所に存在する「Bビル」にて開催されたことから、Xの主位請求である、株主総会の不成立の確認請求には理由がない。

2)会社法には株主総会の開催場所および時間に関する規定がないことから、定款に特別な規定がない限り、会社は適切な場所と時間を自由に選択して株主総会を開催することができる。ただし、株主総会は会社の最高の意思決定機関であり、全ての株主に、審議に関与する機会を与えなければならない。

 このため株主総会は会社の所在地か、あるいは株主の出席に便利で開催に適切な場所にて開催しなければならない。また、招集通知には、株主全体の出席および議決権の行使に資するよう、株主総会の時間および場所を明記しなければならない。

 したがって▽会社が指定した株主総会の開催場所が不適切である▽招集通知に開催場所を明記していない▽他の不当な方法により株主の開催場所への到着または入場を妨げる──場合、株主総会の招集手続きに違法があると見なすべきである。

3)本件では、株主総会の招集通知における開催場所について、当該場所にはビルが5、6軒あるにもかかわらず、住所しか記載されておらず、また具体的な会議室の名称さえ記載されていなかったことから、招集通知の記載が明確でないと考えられるため、招集手続きに違法があり、原告の予備的請求には理由がある。

 被告は第一審の判決を不服として控訴を提起したが、第二審の台湾高等裁判所の2013年上字第855号判決は原判決と同じ理由により、原判決を維持し控訴を棄却した。

 株主総会の招集通知において、開催日時および開催場所(住所、ビル名、階数、会議室の名称)を明確に記載しなければならず、さもなければ株主総会の決議は会社法第189条により取り消される可能性があることに注意する必要がある。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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