リーガル

記事番号:T00052433
2014年9月1日15:33

 商品・サービスを製造、提供する事業者が、口コミ・レビュー投稿の代行を行う事業者に依頼して、口コミサイトやネット掲示板などに、口コミ・レビューを多数書き込ませる行為について、こうした消費者に宣伝と気付かせない、いわゆる「ステルス・マーケティング(ステマ)」が問題になった事件がある。

過料1千万元

 本件の概要は以下の通りである。

 携帯電話、テレビなどの大手メーカーA社からステマを請け負ったB社は、2007〜12年の6年間にわたって、人気の口コミサイトやネット掲示板を中心に、一般人に成り済ました者を使って、A社製品をことさらに持ち上げ、A社に不利なニュースは大したことではないと思わせ、また、A社製品が他社の競合製品と比較して優れていると主張し、競合製品をおとしめてその短所を強調するといった、口コミ・レビューを、自らの正体や商行為であることを隠し、実体験した消費者やユーザーを装って、多数投稿していた。ページビューは毎週平均数千件から数万件に上り、年間では数十万件に達した。

 台湾の公正取引委員会は、13年10月31日の公処字第102184号処分により、上記行為が公正取引法24条の、「取引秩序に影響するに足りる欺罔(ぎもう)行為」に該当するとして、差止命令を出し、A社とB社にそれぞれ1,000万、300万台湾元の過料の支払いを命じていた。A社が不服申し立てをしなかったため、この処分は確定した。

口コミ効果を利用

 処分理由の概要は以下の通りである。

 ステマにおいては、広告よりも客観性、信ぴょう性が高いと考えられる、口コミ・レビューを装って、広告が行われる。

 事業者と口コミ・レビューの投稿者との間の利害関係の有無が、投稿内容に対する一般消費者の取引決定に影響を与えるため、事業者と口コミ・レビューの投稿者との間の利害関係の有無は重要な取引情報に当たる。

 A社とB社の上記行為は以下の条件に全て該当するにもかかわらず、当該重要な取引情報を開示しなかったため、公正取引法24条に基づく法的責任を負わなければならない。

1)事業者がサクラを使って、自らの正体を隠し、自社製品を宣伝したり、他社の競合製品と比較して競合製品をおとしめて、その短所を強調したりすること

2)一般消費者に宣伝広告ではないという誤った印象を与えたり、あたかも自社製品や競合製品がそれらを実体験した消費者の多数から良い・悪い評価を受けているかのように表示させることによって、広告に対して通常行う注意を払うことができず、取引の意思決定の参考になってしまうこと

3)その結果、自社との取引を増やしたり、他社との取引を停止させたりするおそれがあること

利害関係開示が必要

 なお、A社は現行法上、事業者が自らの商行為に関連した意図を隠し、宣伝広告ではないという誤った印象を与えたり、偽装して消費者であるかのように振る舞うことは明文で禁止されていないため、たとえサクラとの利害関係を開示しなかったとしても違法にならないと主張した。

 それに対し、公正取引委員会は、ステマを行う場合、当該利害関係を開示しないと、次のような状況が生じ得るとした。

(1)一般消費者にとって、当該口コミ・レビュー投稿内容の客観性、信ぴょう性が高くなり、取引の意思決定に非常に影響を与える

(2)競合他社にとって、自社製品を購入し実体験した消費者の意思尊重のため、悪い評価であっても反論しにくくなり、いわゆる「袋だたき」に陥るリスクを負う

 また、競争相手の正体が隠されているため、迅速に行政や司法による救済を受けることが難しいとした。

 最終的に、公正取引委員会は、開示義務の明文規定がなくても、A社の上記行為が商業上の競争倫理に反し、公正取引法24条の「取引秩序に影響するに足りる欺罔行為」という一般条項に該当すると判断した。

取引秩序に影響するか

 ステマについては、事業者と口コミ・レビュー投稿者の間に利害関係が存在することを開示しなかった場合、公正取引法に抵触する可能性がある。そのため、ステマを行う事業者および当該事業者を利用する事業者は、意図する行為が「取引秩序に影響するに足りる欺罔行為」といえるか、個別具体的に検討することが必要となる。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
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