リーガル

記事番号:T00053525
2014年10月30日15:24

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の顧問の佐田友です。

 少し前になりますが、基隆付近まで足を伸ばし、海産物直売センターでカニやシャコを買い、近くのレストランに持ち込んで調理してもらって食べるという経験をしてきましたよ~。休日の昼過ぎであり、多くの台湾の方も家族連れやカップルで来られており、非常ににぎわっていました。台北市内でももちろん海産物はいろいろ購入できますが、せっかくの機会でしたので、ハマグリ?アサリ?(あまり貝に詳しくないので自信がありませんが、どちらかだと思います。大きな貝だったのでハマグリかなぁ)も購入し、自宅で妻に調理してもらって食べました。シンプルにパスタを作ってくれたのですが、想像以上にうま味が出ていて、「貝ってこんなにおいしいものだったんだなぁ」と気付かされましたね~。

恐竜裁判官

 さて、今回も前回に引き続き、台湾の司法に関わる話を書いてみます。

 台湾では、実は司法不信がすごいんです。今年の2月に報道されたニュースにおいて引用されていた中正大学の調査結果によれば、市民の裁判官に対する不信任度はなんと81%に達していました。どうしてこのような司法不信になってしまったのでしょうか。同僚の分析は、一般市民の常識から著しく乖離(かいり)している、不合理な判決が下されたことが重なり、司法不信の根が深いものになっているというものでした。

 象徴的な判決として、最高裁の裁判官が3歳の女児に対する性犯罪で、「被告の行為が被害者の意に反していることの証明がなされていない」として、一、二審の判決を棄却したという判決があるそうで、この2010年の最高裁判決は台湾社会で大きな批判を受けたとのことです。このころから、少しずつ「恐竜裁判官」(時代から取り残されているという意味が込められていると思われます)という裁判官をやゆするような表現がちまたで使用され始めたようです。

司法不信の払拭を

 このような司法不信の状況を少しでも改善すべく、市民参加の刑事裁判を行おうという取り組みを司法院が進めていることを最近知りました。

 日本でも数年前から裁判員裁判が開始されましたが、この日本の制度や韓国の市民参加の裁判制度なども踏まえて、台湾独自の市民参加の裁判を司法院は構想しています(中国語では「人民観審制度」といいます)。実際に、士林の裁判所では「人民観審制度」を導入した模擬法廷が開かれており、実際の導入に向けての問題点の洗い出しなどをしているようです。

 司法院が構想中の内容によれば、23歳以上の国民から選ばれた者が、公訴提起された重大案件の第一審に限り、刑事裁判の審理、判決手続きに参与し、意見を明らかにするものの、対象案件の結果に対する表決権は有さず、最終的な判決自体は、裁判官が法律に基づいてあくまで独立して行うというものでした。ちなみに、日本の裁判員裁判では、裁判員は事実認定と量刑(懲役の期間についての決定など)について裁判官とともに判断します。

 台湾の司法院は、将来的な「人民観審制度」の導入により、①司法の透明度を上げ、一般市民の司法への信頼度を向上させること②審判に関わる者を多元的にすることで判決結果を民意に近付けること③法治教育機能の効果を持たせ、一般市民の司法への理解を深めること──を実現することを見込んでいるようです。この「人民観審制度」の導入の取り組みは現在進行中ですが、実際に導入がなされた暁には、台湾の一般市民の法意識に一定の影響を与えることは間違いないでしょうね~。

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。