リーガル

記事番号:T00057618
2015年6月18日15:47

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の顧問の佐田友です。

 最近、蒸し暑い日が続きますが、皆さまは体調を崩さずに元気に日々過ごされていますでしょうか。先日、ゴルフの入らなかった週末に、久しぶりにジョギングに出掛けました。もちろん夕方、多少涼しくなってからです。真っ昼間に走るなんて酔狂なことはしませんよ。自宅近くの河川敷を久しぶりに15分か20分ほど走りました。そして、いくつかある出入り口のうち、青年公園方面に抜ける出入り口を抜けようと河川敷横に設置されているエレベーターに乗ったのですが、なんと、なんと、天国のような涼しさでした。内部にエアコンが設置され、強烈な冷気を放出してくれており、一瞬、ここでしばらく休憩しようかと思ったくらいでしたよ。いやあ、台北市の市民サービスが手厚いのか何なのか分かりませんが、そこまで電力事情が切迫していない表れなのでしょうね。「ありがたい」と思いつつ、一方で、「ここまでする必要があるのかしらん」と考えてしまいました。

日本では明文化がない法原則

 台湾や中国の法律において、日本では法律上明文化されていない内容が明文化されているのを見つけて「面白いな」と感じることがあります。

 例えば、日本の現在の民法には規定されていないものの、個別の判例上は認められている「事情変更の原則」という内容があります。すなわち「契約締結時に前提とされた事情が当事者の予見し得なかった事実の発生によってその後変化し、元の契約通りに履行させることが当事者間の公平に反する結果となる場合、当事者は契約解除や契約内容の修正を請求し得る」というものです。

 この「事情変更の原則」について、台湾の民法には明文で「契約成立後に、その時点で予見不能な状況に変更が生じ、それにより当初の債務の履行が明らかに不公平となった場合、当事者は給付の増額もしくは減額、または当初の債務の変更を裁判所に申し立てることができる」という規定があるんですね~。

 他にも日本の現行の民法には規定されていないものの、改正試案などにおいて検討されている「不安の抗弁」について、台湾の民法には規定があります。「不安の抗弁」とは、「当事者双方が互いに対価的な意義を有する債務を負う契約において、当事者のうち自己の債務を先に履行すべき義務を負う者が、相手方に一定の事由が発生したことをもって、その反対給付である債権につき履行を得られない恐れがある場合、契約締結時に当該事由の発生が予見できなかったなどの条件を満たせば、その債務の履行を拒むことを認める」というものです。

 ちょっと分かりにくいかもしれませんが、例えば、売買契約などの契約で、先に商品の引き渡し義務を負っていても、相手方がいきなり不渡りを出したなど、代金の支払いを受けられない恐れが生じた場合に、履行義務のあった商品の引き渡し拒否を認めるというようなイメージです。

 ちなみに台湾の民法では、「先に給付する義務を負う者は、契約成立後に相手方の財産が明らかに減少し、これにより反対給付が困難になる可能性がある場合、相手方が反対給付をするか、給付の担保を提供するまで、自己の給付を拒絶することができる」と規定されています。その他、中国の契約法においても「不安の抗弁」と同趣旨の規定が存在しています。

判断はケースバイケース

 これら「事情変更の原則」や「不安の抗弁」については、判例などで運用がある程度固まっているのであれば、法律として整備する方がよいのでしょうが、結局当事者間の公平の観点から、ケースバイケースで判断するという側面もありますので、絶対に法律に規定しなければならないわけではないとも考えられるところです。法律に規定してある、していないは別にして、「事情変更の原則」や「不安の抗弁」という法律上の概念があることについては知っておいていただくのもよいと考え、本コラムにてご紹介申し上げました。
 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。