リーガル

記事番号:T00058141
2015年7月16日15:48

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の顧問の佐田友です。

 今年は台風の話をあまり聞かないなぁと思っていたら、いきなり同時に3つもの台風が発生しましたね~。そのうち一番最初に台湾に接近した台風10号(アジア名・リンファ)は、台湾南西部に影響を与えた後、西側にそれて、中国の広東省で猛威を振るい、真偽のほどは不明ですが13億人民元の損害が予想されるというニュースをテレビで見ました。2番目に近づいた台風9号(チャンホン)は、7月10日に台北市など北部の地域で公共機関や学校などがお休みとなる(停班停課)などの影響を与えました。

 台風は人間の経済活動や生活に大きな影響を与えますが、実はサンゴの生育には良い影響を与えると聞いたことがあります。サンゴは海水温が高過ぎると白化し、この状態が続くと死んでしまうらしいのですが、台風はその大きなエネルギーで海水をかき混ぜて水温を下げることで、白化防止に貢献しているんですって。台風は悪いことばかり引き起こすわけではなく、役に立つ側面もあるってことなんですね~。

業務妨害罪が存在しない

 本日は迷惑電話について取り上げます。

 迷惑電話が犯罪となったケースで、例えば日本の裁判例では「そば屋の営業を妨害するため、3カ月の間に昼夜を問わず約970回の無言電話をかけるなどした行為」がありました。当該行為は日本の刑法上の偽計業務妨害罪に当たるとされたのですが、「偽計」という言葉は耳慣れないですよね。辞書を引くと「人を欺く計略」と説明されていますが、裁判例では「人の業務を妨害するため他人の不知または錯誤を利用する手段をもって錯誤を生じさせる手段を施すこと」を指すとされています。少し分かりにくいですが、人を欺く意図で何かしらの業務妨害を行った者を処罰する犯罪といえそうです。日本でこの偽計業務妨害罪を犯した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられます。

 同様のケースが台湾で発生した場合ですが、実は台湾には業務妨害罪という犯罪類型が刑法上存在しておりません。よって、現在の台湾の法律上では、会社やレストランなどに無言電話を大量にかけて業務を妨害しても加害者を刑務所に放り込むことは難しく、民事上の損害賠償しかできない可能性がある、というのが同僚の台湾人弁護士の見解でした。

迷惑電話が不起訴に

 次に、業務妨害ではなく個人に迷惑電話をかけた場合、何らかの犯罪に該当しないか確認してみました。

 日本では「約半年間、連日深夜から早朝にかけて、被害者方に電話をかけ、被害者が受話器を取り上げて応待すると無言で電話を切り、応待しない場合は長時間にわたり電話の呼出音を鳴らし続け、被害者に著しく精神的不安感を与え、かつ被害者を不眠状態に陥れるなど心身を極度に疲労させ、精神衰弱症に陥らせた」という事案で、傷害罪の成立を認めた裁判例がありました。

 同様のケースを求めて、迷惑電話が関係する台湾のニュースを探したところ、無言電話を半年間で12万回も昼夜を問わず個人にかけ、電話を受けた人が眠れなくなり医師にかかったという案件がありました。日本と同じく傷害罪に該当しそうなものですが、台湾の検察官は立証が困難であったためか、起訴を諦めたという結論になっていましたね~。同僚に聞いてみると、電話と病気の因果関係が証明できれば、日本と同様に傷害罪として処罰できる可能性はあるとのことでしたが、実務上は「被疑者が本当に迷惑電話をかけたのか」、そして「迷惑電話をかけたとして、それが原因となって被害者が病気を発症したか」の証明が困難であることも多いようです。 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。