リーガル

記事番号:T00060659
2015年11月30日15:52

 台北地方法院は2015年11月9日、昨年5月に起きた台北都市交通システム(MRT)での無差別殺傷事件の保険金支払い訴訟について、台北MRTでの通り魔殺傷はテロ行為に該当しないため、保険会社は除外事由を適用できず、保険金の給付義務を有するとして、支払いを拒否した保険会社に敗訴の判決を下した。

無差別殺傷=テロ行為?

 本件の概要は以下の通りである。

 鄭捷被告(犯行当時21)は14年5月21日午後4時22分から26分の間に台北MRT板南線の車内において、刃物で無差別に乗客を切り付け、これにより4人を死亡させ、24人に重軽傷を負わせた。

 台北MRTの運営会社、台北大衆捷運(TRTC)は、事前に損害保険会社、新光産物保険(新光産険)の「旅客運送責任保険」を付保しており、契約にはTRTC側が医療費などの費用の支出後に被害者に代わって当該保険会社に対して保険金の給付を申請できると約定していた。

 しかし、先に医療費用を立て替えた健保局が新光産物保険に保険金支払いを申請した際、当該保険会社は、鄭捷被告の犯行は通常の「公共の安全に関わる事故」ではなく、契約に規定する「テロ行為について保険会社の支払いは免責」とする除外事由に該当すると主張して支払い手続きを拒否したため、本件の紛争が生じた。

 台北地方法院は審理後、次のように判断した。

 「テロ行為」とは、個人または団体が、政治、宗教などイデオロギー上の目的(政府転覆や市民らを恐怖に陥れることを含む)を達成するための武力行使および暴力、脅迫、威嚇、破壊などの行為をいう。しかしながら、本件の鄭捷被告による殺傷行為の主たる目的は個人的なストレス発散であり、社会を恐怖に陥れることではないため、テロ行為には該当しない。従って、保険会社は保険金を支払わなければならない。

除外事由は専門家と確認を

 多くの企業が、自社の営業活動によって生じる可能性のあるリスクについて、保険会社に責任保険または火災保険などを付保する。弊所の経験では、保険会社は契約時に保険金支払いが不要となる除外事由を多く設定し、事故発生時には、支払いを回避するために当該除外事由を拡大解釈する傾向がある。従って、会社の権益を保障するため、保険を付保する前に除外事由の内容を法律の専門家に確認してもらうことをお勧めする。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。
http://www.kuroda-law.gr.jp/ja/tw/

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。