リーガル

記事番号:T00061471
2016年1月14日15:27

 皆さん、こんにちは。黒田日本外国法事務弁護士事務所の佐田友です。

 前回のコラムでも触れました選挙の話ですが、先週末に外出した際にやはり選挙運動の盛り上がりを実感することがありました。私は特に、選挙集会などをのぞきに行くつもりはなく、妻と遅めのランチを食べてから自宅までバスで帰ろうとしていたのですが、台北市内の和平東路での車の進みがいつになく遅かったのが始まりでした。ひどい時には、信号が変わっても数メートルしか動かず、「これは事故でもあったのかな」「今までで経験したことのない渋滞だな」などと思っていたのですが、実際には、国民党支持者のパレードが羅斯福路を通って、中正紀念堂方面まで続いているのにまともに遭遇してしまったんですね~。ゆっくりパレードを観察してはおりませんが、相当な数の参加者が行進されていましたよ。日本から3連休を利用して台湾に来られた観光客の方も、日本ではあまり見ない光景にびっくりされたかもしれませんね。

交通事故の賠償責任

 以前のコラムで交通事故対応について取り上げたことがありますが、台湾では交通事故に巻き込まれるリスクが日本より高いような気がします。特に統計数字を調べたわけではないですが、やはりこれだけたくさんのバイクが走っていますし、横断歩道の歩行者のすぐ横をすり抜けていくバイクや自動車を見るにつけ、ハイリスクであるような印象を持ってしまいます。仮に事故に遭ってしまうと加害者との間で損害賠償について交渉などを行う必要がありますよね。そこで、本日と次回の2回に分けて、交通事故を含む不法行為によって発生した損害について、法律上、加害者にどのような賠償責任を負わせることになっているか紹介してみたいと思います。

 まず、日本の不法行為による損害賠償の規定ですが、民法において「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定されています。つまり、交通事故などにより身体を侵害された場合、同条項を根拠に当該侵害によって生じた損害について加害者が賠償責任を負うことになるといえますが、実際に、どのような内容が損害に含まれるかは同条項に明記されておりません。かろうじて財産以外の損害も賠償しなければならないという条項も別にあるので、精神上の苦痛などについても損害の範囲に含まれると解されますが、その他に損害の内容について明らかにする条項はなく、実際に損害賠償の範囲にどのような損害が含まれるかについては長年の実務運用の中で定まってきているのが日本の状況といえます。

けがをした場合

 台湾はどうかと言いますと、民法において「不法に他人の身体または健康に損害をもたらし、労働能力の喪失もしくは減少、または生活上の不足の増加を被害者にもたらした者は、(これにより生じた損害について)被害者に賠償する責任を負う」と身体などに対する損害について、日本より、少しですが明確に規定されています。ただ、やはり条文のみから、賠償が認められる損害の項目がすべて明らかになっているわけではありません。

 例えば、台湾において交通事故でけがをして、通院などをし、一定期間、仕事ができず、後遺障害があった場合に認められる損害がどのようなものであるかにつき、裁判例を確認してみました。すると、医療費(リハビリ費用含む)、医師にかかるための交通費、看護費用、休業補償、労働能力減少分の補償、慰謝料、財産的損害(例えば、事故により損壊したバイクなど)などの賠償責任が認められておりました。これら、台湾の裁判で認められた損害の項目ですが、日本と大きな差はないように思われます(ただし、賠償金額自体の差は当然あります。日本より台湾の方が一般的には少なくなると思います)。

 台湾の裁判例を確認していて、交通事故でけがをした場合ではなく、死亡した場合に認められる損害賠償の範囲について、日本と大きな違いがあることが分かりましたので次回は、その点について紹介しますね~。 

佐田友浩樹弁護士

佐田友浩樹弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

京都大学法学部を卒業後、大手家電メーカーで8年間の勤務の後、08年に司法試験に合格。10年に黒田法律事務所に入所後、中国広東省広州市にて3年間以上、日系企業向けに日中英の3カ国語でリーガルサービスを提供。13年8月より台湾常駐、台湾で唯一中国語のできる弁護士資格(日本)保有者。趣味は月2回のゴルフ(ハンデ25)と台湾B級グルメの食べ歩き。