リーガル

記事番号:T00063244
2016年3月28日16:14

 2011年12月に、台湾の会社法改正案が立法院にて可決され、会社法第27条第2項が「行政機関または法人が株主である場合、その代表者(当該機関または法人の代表権を持つ者に限らない)が取締役または監査役に選任されることもできる。代表者が複数いる場合、それぞれ選任されることができる。ただし、取締役および監査役に同時に選任され、担当してはならない」と改正された。

 改正前の会社法では第27条第2項ただし書きの規定がなかったため、例えば、A社がB社の法人株主である場合、A社は自然人の甲、乙および丙をA社の代表者としてB社に送り込み、甲および乙を取締役、丙を監査役とすることが可能であった。

 しかし、改正後の会社法第27条第2項ただし書きによれば、甲、乙および丙の全員が取締役となるか、または全員が監査役となることは可能であるが、取締役および監査役に振り分けることは不可能になった。

 会社法第27条第2項が改正されたのは、法人株主の複数の代表者が同時に被投資会社の取締役および監査役として選任される場合、監査役が取締役に対して、公正な監査を行うことを期待し難いためである。

 会社法第27条第2項に関する紛争があり、このほど、最高裁判所の判断が下された。本件紛争の概要は以下の通りである。

子会社は別会社扱いか

 台湾企業Y社は13年4月に、株主総会で取締役および監査役の改選を行い、Y社の法人株主であるA社の代表者の甲および乙がY社の取締役に選任され、A社の完全子会社であるB社の代表者の丙および丁がY社の監査役に選任された。これに対して、Y社の別の株主であるX社は、Y社による取締役および監査役の改選は実質的に会社法第27条第2項ただし書きに違反しているため、甲、乙、丙および丁の選任が無効であるとして、高雄地方裁判所に対して、Y社と甲、乙、丙および丁との委任関係が存在していないことの確認訴訟を提起した。(台湾法では、取締役および監査役と会社とは、委任関係であるとされている。)

 高雄地方裁判所は審理の上、13年9月、X社の主張を認め、Y社による改選が会社法第27条第2項ただし書きに違反していることを理由に、甲、乙、丙および丁の選任が無効であるという判決を下した。(高雄地方裁判所2013年訴字第1360号民事判決)

 しかし、被告側(Y社など)が控訴した結果、台湾高等裁判所は14年2月に、2013年上字第326号判決をもって、会社法第27条第2項のただし書きの規定は非公開株式発行会社の法人株主(本件ではA社)およびその従属会社(完全子会社を含む。本件ではB社)には適用されないため、非公開株式発行会社であるY社による取締役および監査役の選任は適法であると判断し、上記高雄地方裁判所2013年訴字第1360号民事判決の見解を覆した。

 ところが、最高裁判所は15年1月に、2015年台上字第35号判決をもって、法人株主(本件ではA社)の代表者および当該法人の完全子会社(本件ではB社)の代表者が同時に取締役および監査役に選任された場合、当該2つの法人(A社とB社)は形式上独立した存在であるが、後者(本件ではB社)は完全に前者(本件ではA社)により掌握、支配されており、その代表者は実質上、いずれも法人株主(本件ではA社)から指名、派遣されているといえ、このようなケースも会社法第27条第2項に含まれるべきであるとして、甲、乙、丙および丁の選任が無効であると判断し、再び上記台湾高等裁判所2013年上字第326号判決の見解を覆した。

 上記に鑑みれば、台湾企業の法人株主となる場合、自社および自社の子会社から台湾企業の取締役および監査役に同時に派遣することは控え、また、自社の代表者を取締役に就任させる場合、監査役は少なくとも、自社と関係のない第三者から就任させた方が望ましいものと考えられる。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

コラム執筆者
黒田法律事務所 尾上由紀弁護士

早稲田大学法学部卒業。2007年黒田法律事務所に入所後、企業買収、資本・業務提携に関する業務、海外取引に関する業務、労務等の一般企業法務を中心として、幅広い案件を手掛ける。主な取扱案件には、海外メーカーによる日本メーカーの買収案件、日本の情報通信会社による海外の情報通信会社への投資案件、国内企業の買収案件等がある。台湾案件についても多くの実務経験を持ち、日本企業と台湾企業間の買収、資本・業務提携等の案件で、日本企業のアドバイザー、代理人として携わった。クライアントへ最良のサービスを提供するため、これらの業務だけでなく他の分野の業務にも積極的に取り組むべく、日々研鑽を積んでいる。

黒田法律事務所・黒田特許事務所

1995年に設立、現在日本、台湾、中国の3カ所に拠点を持ち、中国法務に強い。 現在、13名の弁護士、6名の中国弁護士、2名の台湾弁護士、1名の米国弁護士及び代表弁護士を含む2名の弁理士が在籍しており、執務体制も厚い。 
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