リーガル

記事番号:T00083119
2019年4月22日16:07

 2019年3月、新北地方法院で、贈与契約の取り消しに関する事件の判決が下されました。

 同事件は、母親が2004年、家を購入する資金として息子に500万台湾元(約1,800万円)を贈与したものの、息子が母親に対する恐喝罪等の疑いで起訴されたので、母親が前記贈与の取り消しを求めたものです。裁判所は、入出金明細などの関連資料から500万元の贈与の事実、携帯電話の連絡履歴から恐喝の事実を認定し、息子に対し、母親に500万元を返還するように判示しました。

 ただ、母親が息子の借金返済のために贈与したと主張する186万元余りの金銭については、母親がその事実を証明することができなかったため、当該部分の請求は棄却されました。

贈与取り消し可能なケース

 贈与契約の目的物が相手方に移転された後は、原則として、その目的物の返還を求めることはできません。

 しかし、以下のような場合には、例外的に贈与契約を取り消すことができます。

(1)負担付贈与(受贈者が何らかの債務を負担することを条件にした贈与)である場合に、贈与の引き渡しを受けた後に受贈者がその負担を履行しないとき(民法第412条第1項)。

(2)受贈者が贈与者に対して次に掲げる行為のいずれかをした場合(民法第416条第1項)。

①贈与者、その配偶者、直系血族、三親等内の傍系血族、二親等内の姻族に対し、刑法に処罰に関する明文規定のある行為を故意に行うこと

②贈与者に対して扶養義務がある場合に、その義務を履行しないこと

プレゼントは証拠保管を

 この点、上記(1)のような場合には、日本法においても解除が認められますが、上記(2)のような場合について、日本では、信義則違反などを根拠に贈与契約の撤回を認めた裁判例はあるものの、明文の規定は存在しません。

 なお、(2)の①に関して、過去の事例で多いのは、受贈者が暴行罪、公然侮辱罪(大勢の前で相手に「ばか」と言うなど)や誹謗(ひぼう)罪(当該事実を広める意図をもって「あいつは浮気をしている」という指摘をするなど)を犯した場合です。

 台湾では、公然侮辱罪といった刑罰の重くない(拘留または300元以下の科料)犯罪についても贈与の取り消し理由とされています。

 万が一、そのような行為を受けた時に備え、高額な物品や現金などをプレゼントする場合には、贈与の事実を証明できる資料(レシートやメールなど)を残しておくことをお勧めいたします。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

福田優二弁護士

福田優二弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

大学時代に旅行で訪れて以来、台湾に興味を持ち、台湾に関連する仕事を希望するに至る。 司法修習修了後、高雄市にて短期語学留学。2017年5月より台湾に駐在。 クライアントに最良のリーガルサービスを提供するため、台湾法および台湾ビジネスに熟練すべく日々研鑽を積んでいる。