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第361回 台湾企業による中国「著名商標」の侵害/台湾


ニュース 法律 作成日:2023年7月12日_記事番号:T00109961

産業時事の法律講座

第361回 台湾企業による中国「著名商標」の侵害/台湾

 中国の広州艾美網絡科技有限公司が、智慧財産法院(知財裁判所)で一つの裁判を起こしました。同社の主張は次のとおりです。

 同社は2015年、中国でミニカラオケボックス「咪哒miniK」をリリースしました。また、このミニカラオケの看板、ブース、形状、色、レイアウト、内部の設備などはすでに中国・広東省版権局が発行する「美術作品登録証書」を取得し、美術著作物としての権利を享受していましたが、これに対して台湾の咪噠積股份有限公司が2017年から販売、レンタルしているミニカラオケ製品は当該美術著作物を使用し、その著作権を侵害していると訴えたのです。同時に、この台湾企業が「咪哒miniK」に類似した商標を使用していることについては、「公平交易法(公正取引法)」に違反しているとして損害賠償を請求しました。

 智慧財産法院は2020年4月の第一審で、被告に対して500万台湾元(約2300万円)の支払いを求めました。しかし、被告がこれを不服として上訴したところ、2021年3月の第二審では原告(中国企業)の逆転敗訴を言い渡したのです。理由は以下のとおりです。

1.サインボード、看板のデザインは美術著作に属する。しかし、原告はそれを自分で創作した事実を証明することが出来なかった。また、その他のデザインはいずれも著作権法の保護を受けない。

2.原告は「咪哒miniK」が台湾ですでに「著名商標」であることを証明することが出来なかった。

 原告がその後上告したところ、最高法院(最高裁判所)は2022年6月に原判決(第二審の判決)を取り消した上で、このように強烈な疑問を投げかけました。

「著名商標」証明の問題

 咪噠積股份有限公司のホームページには「咪噠miniKは中国におけるミニカラオケの先駆者です」、「咪噠のビジネスチャンスを正式に台湾導入」、「大陸(中国)で人気沸騰」、「大陸で大人気」、「台湾へ正式導入」などの文字が記載され、原告の簡体字看板及びその商品の写真を掲載している。これらをまとめて証拠としても、原告の「咪哒」及び「咪哒miniK」などの商標が、中国地区における著名商標にとどまらず、台湾の関連業者や消費者が普遍的に認知する著名商標であると判断するにはまだ十分ではないと言うのだろうか?

 このことから分かるように、台湾の裁判所に中国の商標を「著名商標」として認定してもらうために、裁判官が根強く持つ固定観念を、弁護士が取り払う必要があるということです。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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