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労務コンサルタントの事件簿46「転勤を拒否した従業員への減給は違法!?」


コラム 人事労務 作成日:2016年7月29日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの事件簿46「転勤を拒否した従業員への減給は違法!?」

記事番号:T00109295

Aさん:「評価していただけるのはありがたいのですが…」
総経理:「転勤手当も出るし、経済的にも得だぞ。それに総合職は転勤を拒否できないのは知っているだろ?」
Aさん:「確かに総合職として入社しましたが、家庭の事情もありますし、やはり転勤に応じることはできません」
総経理:「そうか…君の事情も分からなくはないが、会社としては組織として活動しているわけだし、特例は認められん。私としては不本意だが、転勤命令を拒否するということは、補助職よりも多く支給している5,000元の手当を減給しなければならなくなるぞ」
Aさん:「会社の一方的な命令に従わなかったら減給なんて、あんまりですよ!」

従業員に対する人事異動命令権は?
 法律的観点から見ると、人事異動命令は、労働契約の範囲内である限り法的拘束力を持つため、従業員はそれに応じる義務があります。会社の人事異動命令を拒否するのであれば、会社としては、給与規定に基づき減給処分を選択せざるを得ないことになります。
 しかし、配置転換の意図が、不当な動機や目的に基づくものであったり、業務上の必要性があっても、従業員が被る不利益がそれを大きく上回ったりする場合には、権利の乱用と見なされ、労働契約が無効となることがあります。また、昨年末(2015年12月16日)に労働基準法が改正され、その改正内容によると、労働基準法第10−1条の規定に基づき、「四.異動先が遠過ぎる場合、雇用者は必要な協力を与える」と明記されています。会社が転勤に伴い別居手当の増額や、一時帰省に必要な交通費の支給、帰省休暇の付与、転勤費用の負担などの条件を提示している場合は、従業員に対する配置転換命令権は、法律の許容範囲内であると見なすことが可能です。一方、従業員は正当な理由でない限り、転勤を拒否することは労働契約の不履行と見なすことが可能です。
 しかし、正社員あるいはパートタイマーであっても、その労働契約の内容が勤務地限定や、職種限定であれば、配転命令は契約の範囲外となりますので、配転させるには従業員の合意が必要になります。
 複数の事業場を有する会社においては、仮に求人広告などに勤務場所として、例えば「台北本社」と記載されていたとしても、それは単に「採用当初の勤務場所を示してあるにすぎない」と判断される傾向が強いものの、やはり紛争防止の観点から、就業規則や個別の労働契約書において、転勤や職種変更の有無を明記し、本人に十分説明しておくことが必要です。

◎参考解釈令の和訳:
第10−1条(異動五原則)
 雇用主は労働者を異動させる時、労働契約の約定を違反してはならなく、並びに下記原則に当てはまらなければならない。
一.企業の経営上必要であり、かつ不当な動機および目的があってはならない。ただし、法律に別途規定がある場合は、その規定に従うものとする
二.労働者の給与およびその他労働条件に対し、不利な変更がない
三.異動後の業務は、労働者が体力的・技術的に耐えられるものである
四.異動先が遠過ぎる場合、雇用者は必要な協力を与える
五.労働者および家族の生活利益を考慮する

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は個別にご相談下さい。

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