記事番号:T00000148
台湾人経営者の前で講演する時、必ず聞かれることは「日本人と台湾人のビジネスに対する考え方の違いは何ですか?」という質問です。
そこで私はいつも「うどん屋の経営方法」を事例にして説明します。
●事例「うどん屋の経営方法」
三代続くうどん屋(台湾の場合は麺店)が有りました。
日本では「三代も暖簾を守る事は素晴らしい」と誉められますが、台湾では「貴方の家系で優秀なのは三代前のお祖父さんだけだったのですね」と笑われます。
さて、そのうちに不景気になり、このままでは店を維持してゆけなくなってきました。皆さんならどうしますか?
そうですね。すぐに「コンビニ」「コーヒーショップ」「スパゲティー屋」等最近流行っているビジネスに業種転換しますね。
日本人は違います。「三代も続いた店を俺の代で潰すわけにはいかない」と考え「もっと美味しいうどんを作ればお客さんが増えるはずだ」と一生懸命に美味しいうどんを作る努力をします。
ここまで話して経営者の皆さんに「どう思いますか?」と聞くと、「日本人は努力家だ」「伝統を重んじる」「台湾人は日本精神を見習うべきだ」と、日本人を賞賛する言葉が出てきます。
しかし、私はこう続けます。
日本人は根本的に職人、台湾人は商人です。日本人は「技術」に拘り、台湾人は「利益」に拘ります。これは半導体産業メーカーであっても、小売業であっても変わりません。
どちらが良いと言うわけではなく、両方必要なのです。
うどん屋の事例に戻り考えてみましょう。
うどんを好む人口が減ってきているのに、全てのうどん屋が更に美味しい味を追求していたらどうなるでしょう?
最終的には一番美味しいうどん屋が残るとしても、ほとんどのうどん屋は一生懸命努力したのに潰れてしまいます。
それに対して台湾人の経営するうどん屋は既に業種転換しているので、うどんを好む人口が減っても、商売には影響有りません。
つまり台湾人には「環境適応力」という武器があるわけです。
ジュラ紀に繁栄していた大きく強い恐竜は環境に対応できなかったため絶滅してしまいました。
環境に適応出来ない者は、いくら強くても滅びる運命にあります。
大切なのは「大きなこと」でも「強いこと」でも無く「環境に適応できること」なのです……。
日本が不景気から長期に渡り脱却出来ないのも、不良債権が問題なのではなく、実はこんな所に根本的原因が有るのかもしれませんね。
ワイズコンサルティング 吉本康志