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第76回 康師傅控股董事長 魏応州氏


コラム 経営 台湾事情 作成日:2012年2月3日

台湾流経営策略

第76回 康師傅控股董事長 魏応州氏

記事番号:T00035151

 今回は台湾系で中国最大手の食品事業グループ、頂新国際集団の創業者で、康師傅控股(カンシーフ)董事長である、魏応州氏を紹介します。

 頂新国際集団は、傘下に食品製造業(康師傅、味全食品工業)、流通事業(楽購超市、全家便利商店、飲食チェーン事業(德克士、有楽和食)の3大事業を抱えています。魏氏の個人資産は57億米ドルに上り、米経済誌フォーブスによる「2011年台湾の長者番付」で4位です。ACニールセンが10年12月に行った調査によると、中国市場における主力製品のシェアは、▽即席めん、55.8%▽茶飲料、51.9%▽ペットボトル飲料水、20.8%──で、安定した地位を築いています。
乗客の反応で大商機発見

 魏氏は1953年、彰化に生まれました。中学卒業後、進学せずに父親が創業した油脂加工工場で働き始めます。89年、他の兄弟3人と共に中国に進出し、ラード、エッグロールを売り出すもうまく行かず、倒産の危機に見舞われます。

 当時、魏家4兄弟は、中国で列車で移動するときには、台湾から持参した即席めんを食べていました。その際、他の乗客たちが興味を示し、「どこで買えるのか?」と質問を受けることがよくありました。嗅覚の鋭い4兄弟は、中国には即席めんの巨大な需要があることに気づき、92年、同市場への参入を決めます。従業員に出資してもらうなどなんとか資金をやりくりして、天津工場を設立しました。

 当時中国市場では、2種類の即席めんが出回っていました。一つは空港やホテルなどで販売されている日本から輸入された「高価格即席めん」で、1袋5〜8人民元もしたため、一般庶民には手が届きませんでした。もう一つは中国企業の袋入りめんで、1人民元以下の低価格でしたが、おいしくありませんでした。

 魏応州氏はこうした情況から、高価格帯と低価格帯の中間の市場に狙い目があると考えます。何万回にもおよぶリサーチの結果、中国では濃い味で、特に牛肉の味が好まれることが分かりました。そこで「紅焼牛肉麺」を主力製品として売りだすことを決めます。小麦粉、スープ、製麺方法にこだわり、長く湯に浸しても麺にこしが残るようにしました。また、2種類の調味料と細切り肉でだしをとったスープを添えました。価格はわずか1.98人民元。康師傅は一気に人気に火がつきます。

 頂新国際集団は94年から13都市に生産拠点を設け、生産ラインを114本にまで拡大します。また、味の好みの地域差に応じて、多くの種類の製品を開発しました。即席めんの年間販売量は100億袋、並べたら地球を37周するほどで、康師傅は中国での即席めんの代名詞となりました。康師傅の「康」は健康を、「師傅」は専門、高技術を表す、中国ではポピュラーかつ親しみのある尊称です。

10倍の営業マン投入

 98年、魏応州氏は販売ルート強化の「通路精耕」戦略をスタートさせます。一般的にインスタント製品の販売は販売店に任せ切りですが、康師傅は自社の営業マンを販売店に派遣して、売り込みから製品の配置までを行いました。営業マンの数は他社の10数倍。これにより、康師傅製品はどんな田舎でも買えるようになりました。現在、中国では営業所548カ所、倉庫89カ所、販売企業は6,155社、直営小売店は7万3,282カ所に達しています。

 重要なのは康師傅が「量」だけではなく「効率」を重視した点です。出荷は「入金されてから」を徹底しており、09年の平均売掛期間はわずか8.82日でした。

厳しさの中にも思いやり

 魏氏は自分に厳しく、他人には謙虚な、「ワークホリック」です。若いころは毎日朝7時には出勤し、夜は12時を過ぎても会社に残る猛烈な仕事ぶりで、社員たちも「24時間臨戦態勢」を強いられました。といっても、人間らしい心を持ち合わせていない訳ではなく、思いやりを感じさせる行いも多くしています。

 中国に進出した際は、性格が忠実なため、大勢の山東省出身者を採用しました。当時他社の月給は200人民元だったところに600元を払い、社員の両親に安心してもらうため、専用車で天津本部の見学に招待しました。そうして育てた社員たちが、その後中国各地で活躍する中堅幹部となりました。

500億ドル超のグローバル企業へ

 98年、頂新国際集団は、50年もの歴史を持つ台湾第2の食品グループ、味全食品工業を買収します。02年には台湾で康師傅の即席めんを16元という低価格で発売、人気の的となりました。

 09年には台北101ビルの約3割もの株式を取得して、民間の筆頭株主となりました。昨年11月にはペプシコーラから5%の出資を受ける代わりに、中国でのペプシ商標製品の生産・販売を権限を獲得しました。魏氏は「時価総額500億米ドル超のグローバル企業になる」と力強く語っています。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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