記事番号:T00000733
● 離職と退職
社員が会社を辞める事を中国語では「離職」と表し、定年退職は「退休」と表します。
台湾は企業のノウハウが高度化する事で、労動集約的産業から付加価値の高い知的産業へと脱皮を遂げてきました。
しかし、知的産業になればなるほど、企業のノウハウは多くなり、社員の離職による「ノウハウの流出防止」が企業の重要課題となっています。
●事例:競業への転職
A社は台北で不動産仲介及び売買を営む会社である。
A社に勤務する荘氏はA社と競業禁止契約を結んでいた。
競業禁止契約の概要は「離職後3ヶ月以内に許可無く、競合他社に勤めてはならない。もし違約の場合は賠償金50万元を支払う」というものであった。
しかし、荘氏は台北県にある競合B社からのヘッドハンティングに応じ
A社を離職後すぐに、同僚4人を連れてB社に入社してしまった。
荘氏がB社に転職した事を知ったA社では、すぐに裁判を起こした。
起訴内容は、競合他社にノウハウを持ち出され、損害を被ったため荘氏に賠償金50万元の支払を求めたものであった
…しかし、裁判の結果はA社にとって厳しく、A社の全面敗訴という結果に終わってしまったのだった。
● 解説
判決の理由は概ね以下の通りであった。
(1)不動産仲介業の仲介担当者には特別のノウハウは無く、A社の主張しているノウハウは、業界の常識である。
(2)荘氏の担当する職位は幹部とは言えず、企業の機密を入手できる立場ではない。
(3)競合禁止の範囲が不明確であり、台北市から台北県への転職なので損失を証明できない。
(4)A社は荘氏に対し、競業禁止期間の賃金保証をしていない。
(5)荘氏は、A社勤務期間はB社では勤務しておらず、また、A社の情報を持ち出したという証拠も無い。
企業は競合就労禁止契約を結んだからといって、安心は禁物です…
ワイズコンサルティング 吉本康志