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第584回 似ているけれどもやっぱり海外!?


ニュース 法律 作成日:2025年8月25日_記事番号:T00123694

知っておこう台湾法

第584回 似ているけれどもやっぱり海外!?

 今月4日、高雄市でとある男性が朝食後帰宅したところ、ポケットに入れていたはずの5000台湾元(約2万5000円)を紛失していることに気付き、警察に通報しました。

 防犯カメラの映像から、朝食店に居合わせた女性が、男性のポケットから現金が落ちた瞬間を目撃し、拾って持ち去っていたことが判明しました。

 取り調べに対し女性が、「一時的な欲に駆られてしまった」という趣旨の供述をしたことから、占有離脱物横領罪の容疑で高雄地方検察庁に送致されました。

■窃盗罪でなく横領罪?

 さて、なぜ窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪になるのだろうと疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。刑法は、以下のとおり規定しています。

320条1項窃盗罪

「自己または第三者の不法な所有とする意図で、他人の動産を窃取した者は、窃盗罪とし、5年以下の有期懲役、拘留、または50万元以下の罰金に処する。」

337条占有離脱物横領罪

「自己または第三者の不法な所有とする意図で、遺失物、漂流物、またはその他持ち主の占有を離れた物を横領した者は、1万5000元以下の罰金に処する。」

■占有していたか

 記事上では具体的な内容が記載されていないため断言はできませんが、男性は、朝食店で現金を落とした後、帰宅後初めて当該現金がなくなったことに気付いています。

 この事実を捉えて、現金が、「持ち主」である男性の「占有を離れた物」であると法的に評価され、窃盗罪ではなく、占有離脱物横領罪が適用された可能性が高いと考えられます。

■邦人のスリ被害多発

 被害額が5000元という比較的に少額な置き引きでさえ報道対象とされることから、台湾の治安の良さが伺えます。

 今月12日、公益財団法人台湾日本交流協会からは、最近の注意すべき情勢として、スリ被害が多発している旨の注意喚起がなされました。

 駐在をしていると人の暖かさに触れる場面が多く、海外であることを忘れてしまいそうになりますが、いま一度気を引き締める機会としたいものです。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

秋口麻貴弁護士

秋口麻貴弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

高校時代に参加した弁護士の講演がきっかけとなり、国際的に活躍できる法曹を志す。高校卒業後、台湾の大学に進学し中国語の習得並びに国際感覚の涵養に励む。在学中は積極的に日台比較法研究会への参加、現地の法律事務所でのインターン等を通して自身の法律知識を深めた。台湾法のみならず、様々な法分野においてクライアントに寄り沿うことができる弁護士を目指し、日々研鑽を積んでいる。

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