ニュース 社会 作成日:2025年12月22日_記事番号:T00126031
19日夕方、台北都市交通システム(MRT)台北駅地下通路(中正区)と中山駅(中山区)近くの繁華街で、男が刃物を振り回し、通行人ら3人が死亡、11人が重軽傷を負った。男はビルの屋上から飛び降り死亡した。警察の調べで、男はその直前にも放火を繰り返していた。押収されたタブレット端末などから男が、11年前に台北MRT車内で起きた無差別殺傷事件について検索し、発煙弾などを購入するなど、2年前から準備していたことが判明した。警察は計画的な犯行と見て、動機の解明を進めるとともに、資金源や共犯者の有無などを調べている。事件は社会に大きな衝撃を与え、年末年始の大規模イベントを控えて、会場や交通機関、繁華街での警備が大幅に強化された。22日付聯合報などが報じた。
中山駅近くの現場には、血のついた衣類などが残され、警察が証拠を集めていた(20日=中央社)
転落死したのは、桃園市出身で無職の張文・容疑者(27歳)。警察の調べによると、容疑者は19日午後3時40分ごろから中山区の林森北路などで車やバイクなど放火を3件繰り返し、借りていた台北駅近くのアパートに戻って着替え、その部屋にも放火した。
午後5時20分ごろ、台北駅地下通路で発煙弾を投げ、制止しようとした男性を刃物で刺して、台北駅と中山駅を結ぶ中山地下街を通って宿泊していた旅館に戻って着替えた。徒歩で移動し、午後6時半すぎ、中山駅前の繁華街で発煙弾を投げ、刃物で通行人らを襲撃。午後7時前、商業施設の誠品生活南西店に入って買い物客を襲った後、屋上から転落して1時間後に病院で死亡が確認された。
容疑者は火炎瓶53本、発煙弾24個、刃物13本を準備していたが、その多くは旅館に残されていた。タブレット端末を解析したところ、クラウド上に残っていた襲撃計画書には、犯行時間や移動ルートなどが詳細に記され、実際の犯行とほぼ一致していた。

警察は、最初に放火を繰り返したのは、警察が放火事件の対応に向かったすきを突いて、繁華街で人目を引く事件を起こすのが目的だったとみている。5回も着替えや変装を繰り返したことや、人出で混雑する台北駅と中山駅周辺で事件を起こしたのは逃走しやすいからではないかと分析している。
事件後、中山駅周辺には銃を携帯した警察官が配備され厳重な警備態勢が敷かれた(19日=中央社)
容疑者は事件の前に現場周辺を行き来し、誠品生活南西店にも出入りしていたことが確認されている。転落した場所は資源回収場で、事件前までは段ボールが成人の身長ほど積み上げられていたが、事件当日は偶然にも撤去されていた。容疑者が段ボールの上に飛び降りて逃走しようとしたとの見方も出ている。
張・容疑者が借りて住んでいた台北市の部屋に警察が家宅捜索に入った(19日=中央社)
■11年前のMRT事件を模倣か
また、タブレット端末には、2014年5月21日、台北MRT板南線の車内で男(当時21歳の大学生、16年に死刑執行)が刃物で乗客らを刺し、4人が死亡、24人が負傷した事件について頻繁に検索していた痕跡があった。男の名前を挙げて「社会は鄭捷に借りがある」といった表現も見つかったことから、警察はこの事件を模倣した犯行の可能性が高いとみている。
19日午後5時半ごろ、容疑者が放火したアパート周辺に消防車5台が出動していた(YSN)
■予備役召集に応じず指名手配
容疑者は16年、桃園市内の私立高等職業学校を優秀な成績で卒業。銃器やサバイバルゲームに強い関心を持っていた。21年に空軍の志願兵として入隊したが、酒気帯び運転で除隊処分を受けた。24年11月、予備役の教育召集やその後の検察への出頭要請に応じなかったため、今年7月、兵役妨害処罰条例で指名手配されていた。両親は「息子は2年以上、家に戻らず、連絡もなかった」と話している。
19日午後5時半過ぎ、MRT台北駅は封鎖され、入場できない状況だった(YSN)
容疑者は23年6月から1年間、警備員として月給約4万台湾元(約20万円)で働いていたことが確認されている。しかし、それ以降は給与を受領した形跡がなく、生活費は母親からの不定期でわずかな送金に頼っていた。それにもかかわらず、容疑者は24年4月からネットで防毒マスクなどの道具を購入し始め、今年1月以降はサバイバルゲームの業者から発煙弾などを購入していたことが判明した。警察は、昨年から犯行を計画し、準備期間は約2年に及ぶとみている。
賃貸住宅の家賃支払いや多数の犯行道具の購入について資金提供者がいなかったか、警察は金融機関に照会するなどして、事件の全容解明を進めている。
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