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中華航空でパイロット200人流出、安全性に不安要因


ニュース 運輸 作成日:2007年10月11日_記事番号:T00003102

中華航空でパイロット200人流出、安全性に不安要因

 
 中華航空(チャイナエアライン)のパイロットが、中東や韓国をはじめとする海外航空会社の引き抜きにより過去2年半で200人近くも流失していることが、同社の現職パイロットの証言で明らかになった。長距離用747-400型機のパイロットが不足しているため、パイロットたちは勤務時間の延長を強いられ、経験不足の者が動員されることもあるという。那覇での爆発炎上、佐賀での亀裂発見・離陸トラブルと事故が相次いで安全性が改めて問われている同社だが、人的な不安要因が新たに浮き彫りになった形だ。11日付聯合報が報じた。
 
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 中華航空の正副パイロットは現在1,180人。過去2年半の離職者200人のうち、約半数が海外航空会社の引き抜きよるものだ。この事実を打ち明けたパイロットは、「飛行機の速度は年々増しており、飛行時間が増えれば増えるほど疲れる」と語る。台湾の民用航空法はパイロットの月間飛行時間の上限を100時間までと規定しており、中華航空の別のパイロットによると、通常であれば月間の平均飛行時間は70時間程度だが、最近は一部のパイロットの平均飛行時間が90時間以上に上っていて、負担が限界に近づいているという。

 中華航空の幹部は、「台湾のパイロットは有能で、ここ数年の自社養成パイロットの成績も良い。那覇での火災事故での冷静な対応も高評価を受けている」と語り、自社の人材育成能力を強調している。しかし、2日に就任したばかりの趙国帥董事長は、「福利厚生を改善し、全力で優秀なパイロットを引き止める」と流出に懸念を表明した。

激しい引き抜き攻防戦

 中東のエミレーツ航空は10日と11日台北市でパイロットの募集説明会を開き、初日の10日は100人以上の現役パイロットが会場を訪れた。出入り口では厳重なチェックがなされ、台湾の航空会社も自社のパイロットが来ていないか調べるために「スパイ」を派遣するなど、パイロット引き抜きをめぐる攻防戦の激しさを印象付けた。

 エミレーツ航空は最近A380型旅客機を40機購入したばかりで、100人の正パイロットと300人の副パイロットを必要としているとみられる。中華航空と長栄航空(エバー航空)はA330型とA340型機種を保有しているため、引き抜きの重点的なターゲットとなっているようだ。

育成に1千万元

 中華航空は、オーストラリアのパイロットスクールでの基本訓練や機種システム訓練などパイロット養成に2年半をかけ、その費用は1,000万台湾元(約3,600万円)にも上る。しかし、せっかく育ててもより給与の高い海外航空会社に移籍するパイロットも少なくない。中華航空はこのため、自社で育成したパイロットに対して15年契約へのサインを要求している。だが実際は、「契約違反者には離職証明を出さない。提訴もあり得る」と警告する以外に、有効な手だてがないのが実態だ。