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立法院から学生退去、中台交渉の透明化主張で成果


ニュース 社会 作成日:2014年4月11日_記事番号:T00049710

立法院から学生退去、中台交渉の透明化主張で成果

 中台サービス貿易協定に反対して立法院を占拠していた学生たちが10日夕方、予告通りに退去した。期間、参加者数とも台湾史上最大となった学生運動は一段落を迎えたが、学生たちは今後台湾各地で運動の輪を広げ、中台協定に対する監督条例やサービス貿易協定の審議の動きを注視する構えだ。中台交渉の透明化を求めた訴えは広く共感を呼び、独立派寄りの11日付自由時報が行ったアンケート調査によると、今回の学生運動に対し、台湾民主主義の発展にとって好影響を与えたとの評価が約7割に上った。


立法院からの退去の後、運動に参加した学生たちは互いに抱き合って24日間の健闘を称えた(10日=中央社)

 学生リーダーの林飛帆氏(台湾大学政治系研究院)は退去に際し、▽公民は中台協定への対応と監督に参画する機会を持つべきで、主権や市民の重要な福祉に関わる中台協定は住民投票によって決める権利を持つ▽中台協定は安全保障、自由民主、文化アイデンティティー、環境生態、および分配の公平など人権的価値を擁護する内容であるべきで、さらにそれらの価値が経済発展よりも上位であるべき──などとした6点の意見を発表した。さらに、今後運動を国政の方向性のレベルにまで高めるとして、「台湾こそがわれわれの受け継ぐ責任だ」と宣言した。

 立法院周辺には2万人の若者らが集まり、運動のテーマソングとなった「島嶼天光」を全員で合唱して解散した。特に大きな混乱はなかった。退去に反対し、周辺で座り込みを続けた学生らは一時2,000人にまで膨れ上がったが、11日午前に警官隊によって解散させられた。ただ、その後も100人余りが残っているという。

馬総統「今後は意志疎通図る」

 「サービス貿易協定撤回」の訴えは従来の野党支持層にしか支持が広がらず、林飛帆氏が表明した6点の意見の中にも盛り込まれなかったものの、対中交渉の透明性を高めるべきという主張は監督条例の立法化につながった。馬英九総統は10日、「学生運動から皆が多くを学んだ。政府は今後、両岸(中台)で協定を結ぶ際は社会との意思疎通をより多く図りたい」と語った。

 学生運動の評価について、自由時報はその論調からアンケートで実際以上に賛成の割合を多く出した可能性があるが、親中紙の中国時報が3月28日に発表したアンケートですら、立法院の占拠に対し賛成と反対が各46%で反対が上回ることはなかった。台湾社会は学生運動に肯定的な見方をしていたことがうかがえる。

 李登輝元総統は学生運動に対し、「台湾を第2次民主改革に向かわせるもので、それにおいては市民の積極的な参加と不断の監督が重要だ」と評価した。さらに、今後中台間では経済協定でも政治協定でも闇取引はできないと中国側に表明した意義があったと語った。

 なお、学生運動を指揮した林飛帆氏と陳為廷氏は自由妨害罪や公務執行妨害罪、違法集会デモなど計19件で告発を受けており、検察当局は近く事情聴取を行う構えだ。ただ世論は寛大な処分を望んでいることから、厳しい処分が下されない見通しだ。

監督条例を委員会送付

 11日午前は立法院院会が開かれ、中台協定監督条例の行政院案や、監督機能の強化に重点を置いた民間案など7案の内政委員会への付託を決めた。

 監督条例については江宜樺行政院長が10日、「一定程度民間案を参考にしてもよい」と発言した。サービス貿易協定の審議が大幅に長引くことを防ぎたい狙いとみられる。

 一方、王郁琦行政院大陸委員会(陸委会)は10日、サービス貿易協定が立法院の審査過程で修正を迫られた場合、「大陸(中国)と再交渉するほかはない」との考えを初めて示した。再交渉はサービス貿易協定によって経済に悪影響が出るとする民進党の主張で、同党の張惇涵広報担当は王主任委員の発言に対し、「サービス貿易協定に対する馬政権の姿勢に変化が起きたのか、さらに観察する必要がある」との考えを示した。

 民進党は監督条例成立まではサービス貿易協定の審議をボイコットする方針で、当面監督条例の審議で激しい議論が予想されることから、協定成立はかなり先にずれ込みそうだ。