ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

《高雄爆発事故》「LCYに責任」断定、異常感知も作業続行


ニュース 社会 作成日:2014年8月4日_記事番号:T00051919

《高雄爆発事故》「LCYに責任」断定、異常感知も作業続行

 死者28人、重軽傷者305人の大惨事となった高雄市中心部の爆発事故について、高雄市環境保護局は、輸送管を通じてプロピレンの供給を受ける作業を行っていた石油化学大手、李長栄化学工業(LCYケミカル、栄化)に責任があると断定した。輸送管の圧力が急下降する異常を感知していながら市当局に通報せず作業を続行したことが事故につながったとみている。一方、高雄市も初動対応に不手際があったと批判されている。4日付聯合報などが報じた。


謝罪するLCYの李董事長(中)ら。責任が確定した場合、賠償金は天文学的な額になるとみられている(3日=中央社)

 陳金徳・市環保局長によると、7月31日夜、LCYは爆発を起こした4インチ輸送管を使って、台聚集団(USIグループ)傘下の石化製品専門の運輸業者、華運倉儲実業(CGTD)から大社工場(大社区)にプロピレンの供給を受ける作業を行っていた。

 CGTDの記録によると31日午後8時43分、輸送管の圧力が突然1平方センチメートル当たり42キログラムから13キロに急低下する異常が起きた。

 このため1度輸送を中断して、9時20分に再開。しかし輸送管の圧力指数が上昇しなかったため再び輸送を中断した。双方は圧力テストを実施したが、LCYは結果がはっきり分からない状況の下、プロピレン不足が製造工程に影響を及ぼすことを懸念して引き続き供給を行うようCGTDに要求、CGTDは10時10分から輸送を再開したという。

 その後、11時35分にCGTDの現場責任者が出勤途中に二聖路と凱旋路でプロピレンの臭気に気付いて漏えいが起きたと判断、即刻CGTDに通報し、これにより供給作業は3たび中断された。LCYも11時45分にバルブを閉じたものの、既に大量のプロピレンが漏れた後で11時57分に大爆発が起きた。

 なお、プロピレン漏えいの直接の原因は、最も爆発の激しかった凱旋路と二聖路の交差点付近で、4インチ輸送管を補強していたパッチング材が緩まって外れたことが原因と報じられている。

LCY、董事長が謝罪

 LCYは3日、李謀偉董事長が謝罪会見を行い、事故原因の一つとして同社のプロピレン授受作業が考えられると認めた。事故原因は司法の捜査を待ち、負うべき責任は決して回避しないと話した。

 輸送管の圧力が急下降した際、なぜ市当局に報告しなかったのかとの質問に対しては、「圧力下降は必ずしも漏えいとは限らず、ポンプの問題の可能性もあり、以前にも同じような状況があったため」と弁明した。

 プロピレン受領を再開した判断については、「CGTDとの間で圧力テストを実施した結果、圧力低下が続かず正常であることが示されたため」と回答したが、双方の間でデータを交換しておらず、厳密な検証が行われていなかったことも明らかになった。

 爆発が起きた輸送管は、1990年の供給開始後、24年間にわたって維持管理の責任者が不明確であるお粗末な実態も分かった。邱媛媛LCY副総経理らは、輸送管は台湾中油(CPC)に点検責任があり、LCYはそのための鍵すら持っていないと述べた一方、張瑞宗CPC副総経理は、LCYの前身の福聚塑膠が30年前CPCに輸送管埋設を委託し、埋設後に所有権と管理権がLCYに移っておりLCYにこそ維持管理の責任があると反論した。


現場では消防局員2人の行方がまだ分かっておらず、4日も捜索が続けられた(4日=中央社)

初期判断に甘さ

 爆発までの鍵となる3時間については、高雄市の対応も批判を浴びている。既に8時46分には市民から凱旋三路と二聖一路の交差点で白煙が出ており、ガス漏れではないかとの通報を受けて、消防局の職員が現場に赴き放水で気体を希釈した。しかしその後、9時46分に瑞隆路で、10時20分には崗山西街の路上から火が出たものの、市はバルブを閉鎖する判断ができず、市民を避難させるどころか通行止めの措置すら取れないまま、爆発を迎えてしまった。重大事故へと発展する危険性を軽く見ていたことは否めない。

 なお、爆発現場一帯では、中国石油化学工業開発(CPDC、中石化)の輸送管に260トンのプロピレンが残存していたが、 CPDCとCPCと緊急処理によって3日までに70トン減少した。両社は3日以内に残りの処理を終えられると説明している。

石化各社、生産に影響なし

 4日付工商時報によると、事故による石化メーカーの生産への影響は、捜査対象となったLCYとCPDCの2社を除いて出ていない。

 これについて仁大(仁武・大社)工業区サービスセンターの鄭雅升主任は、大社工業区の石化メーカーの原料供給源は、爆発の起きた凱旋路ルート以外にも、CPC林園工場、第5ナフサプラントがあり、CPC桃園製油所からタンクローリーで運んでもらうことも可能で、原料供給に問題はないためと説明した。