食用油などの廃油を原料に使ったラード（豚油）が台湾全土の食品会社や飲食業者に出回った問題で、衛生福利部食品薬物管理署（食薬署）は８日、影響を受けた製品は208種類、業者は1,248社に達したと発表した。セブン−イレブン、ギョーザチェーンの八方雲集、台中の銘菓・太陽餅の太陽堂食品など有名業者も含まれており、消費者に衝撃と不信感を広げている。廃油は問題のラードを生産していた強冠企業（高雄市大寮区）以外にも卸されていた可能性があり、事件はさらなる広がりを見せるとも懸念されている。９日付自由時報などが報じた。

廃油ラードの使用が判明した基隆市の老舗中華菓子店は、７日までに返品が100万元を超えた（中央社）

　強冠の廃油ラード「全統香猪油」を使用した製品は、セブン−イレブンは調理済み食品のビーフン「国民炒め米粉」や、シューマイ「三鮮焼売」、おでん「関東煮阿給」で、全て売り場から撤去した。八方雲集はカレー味水餃子への使用が判明したため、新北市衛生局が７日夜、淡水区の同社工場で問題製品を使用した材料約562キログラムを差し押さえ、同社は各支店に関連製品の販売停止を指示した。

　太陽堂食品は今年３月から８月にかけて強冠のラード509缶を調達、計8,000箱、23万個の太陽餅に使用しており、既に全て消費されたとみられる。台中市衛生局は同社が問題を自主的に当局に通報せず、回収措置も取らなかったとして食品衛生管理法違反で200万台湾元（約710万円）の罰金処分を科した。これにより、台中市内で「太陽堂」を店名に掲げる他の業者も売り上げが落ちているという。

　この他、著名菓子店、台北犁記の芝麻肉餅や、高雄市の呉記食品の太陽餅、有名食品メーカー、味王の即席めんの調味料でも廃油ラードの使用が判明し、呉記食品の店舗では８日、製品の返品のために消費者が数百メートルの列を作った。

　また、強冠の製品を販売していた巧紳公司（新北市中和区）、食品メーカーの紅象食品（新北市板橋区）も、当局の調査に協力せず問題を隠そうとしたとして２社合計1,100万元の罰金処分を受けた。

13年前から劣悪油使用？

　９日付自由時報は、強冠は2001年より香港から低質の油製品を輸入しており、今回逮捕された郭烈成容疑者（32）から調達した廃油と２対１の割合で混ぜ合わせた上でラードに混入させていたという元同社従業員の話を１面トップで報じた。

　郭容疑者は４年以上にわたって廃油を販売していたことが押収された資料から分かっているが、元従業員の話が事実であれば、強冠は13年前から劣悪な油を製品に混入させていた疑いがある。元従業員によると、強冠は以前は米国製ラードを調達していたものの、コストの安さから香港製低質油に切り替えている。低質油は非常に臭く、とても人が飲めるようなものではないという。

　屏東地方検察署は強冠に対し、廃油を含む低質油の仕入先や供給先など取引の全容解明を進める方針だ。郭容疑者に対しては、強冠以外に卸先がなかったか追及する構え。郭容疑者は、皮革の廃油を卸した豚の飼料生産会社（進威公司、屏東県万丹郷）から飼料を調達していたことも明らかになっており、この飼料の使い道も捜査する。

検査「合格」に疑問の声

　一方、衛生福利部は８日、「全統香猪油」の分析を行った結果、酸価が0.3mgKOH/g fat、発がん性物質ベンゾピレン0.7ppb（10億分の１を示す単位）が検出されたが、いずれも基準を下回ったと発表した。ただ、郭容疑者に供給を行っていた業者の回収油は、酸価がいずれも基準を上回り、ベンゾピレンが基準の2.3倍に当たる6.6ppb検出されるなど問題が見つかった。

　強冠の廃油ラードは「合格」との検査結果が出たものの、専門家からは「不合格の原料を使用している以上、必ずしも正常であることを意味しない。検査項目以外の有害物質が隠れている可能性もある」といった指摘が出ている。

ＧＭＰ新制度前倒しへ

　今回は味全食品工業、奇美食品など、廃油ラードを使用した５社14製品に食の安全性を認証する「ＧＭＰ（製造工程管理）認証」が出されており、またもＧＭＰ認証の信頼性が低下する事態となっている。

　ＧＭＰ認証制度は昨年の食品偽装事件を受けて、来年３月31日から改正新制度の本格運用が予定されている。これについて経済部工業局の関係者は、運用開始時期を１月１日に前倒しして、業者がそれまでに全製品で認証を獲得できない場合、ＧＭＰ資格を取り消すことで厳格化を図る方針を示した。

孫宝年ＧＭＰ協会理事長は８日謝罪会見を行った。ＧＭＰはマークの「笑顔」どころか「笑い話」だとの皮肉が聞かれている（中央社）