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頂新集団が食用ラードに飼料油混入、消費者の不信感増すばかり


ニュース 食品 作成日:2014年10月9日_記事番号:T00053178

頂新集団が食用ラードに飼料油混入、消費者の不信感増すばかり

 頂新国際集団の傘下企業、正義公司(高雄市仁武区)が、飼料用油を混入させた食用ラード(豚脂)を食品業者や飲食店など230社以上に販売していたことが8日明らかとなった。廃食用油が原料に使われていた事件の衝撃がさめやらない中、食品業界のモラルに対する不信感を改めて広げている。特に食用ラードは、正義と先月摘発を受けた強冠企業(高雄市大寮区)の2社で市場シェアの大部分を占めていただけに衝撃は大きい。9日付聯合報などが報じた。


「正義食品好形象(正義の食品は良いイメージ)」の標語が滑稽に映る(8日=中央社)

 飼料用油の混入が発覚したのは正義が販売していた「維力清香油」、「維力香猪油」、「正義香猪油」などで、量販店や飲食店、小吃(軽食)店、夜市(ナイトマーケット)などに流通している。衛生福利部(衛福部)は9日、正義に対し飼料用ラードが混入したとみられる68品目の自主回収を要求したことを明らかにしたが、家楽福(カルフール)、全聯福利中心(Pxマート)、大潤発(RTマート)などの小売業者は、既に8日より使用が疑われる商品の撤去を始めていた。

 なお、飼料用油について専門家は、飼料用油はブタやウシなどの内臓が使用されており、細菌、重金属などが含まれることから腎臓機能への影響や、心血管の疾患を引き起こす可能性を指摘した。

正義、「当社も被害者」強調

 今回の問題は台南地方法院検察署が廃食用油の行方を捜査していた際、正義が2010年12月~14年5月までの間に約1,800トンの原料油を調達していた鑫好企業(高雄市鳥松区)が、飼料用油を2,000万台湾元(約7,100万円)以上購入している事実が浮上し、この飼料用油が正義の食用ラードに混入している疑いから調査を続けた結果、明らかとなった。

 飼料用ラードを正義に販売していた鑫好は、正義で特別販売処長を務め04年に退職した呉容合容疑者(51、拘束済み)が実質1人で経営している会社だ。同社は久豊油脂(嘉義県)、晋鴻貿易(雲林県)、福瀧油脂(雲林県)や屏東県九如郷の違法廃油工場などから飼料用油を購入し、食用油として正義に販売していた。

 何育文・正義総経理は、「鑫好から調達した製品には『食用』と明記されており、飼料用油とは知らなかった。正義も被害者だ」と強調した。しかし、正義は今年4月に屏東の違法廃油工場を視察した際、衛生状況に不合格判定を下しながらも、引き続き鑫好から計80トンを調達しており、呉容疑者とは旧知の関係だったことからも本当に何も知らなかったのか疑問が残る。なお、正義は以前、強冠に次ぐ約40%の市場シェアを得ていたが、強冠の廃油ラード事件を受けて80%まで上昇していた。

頂新の問題発生、1年で3回目

 正義の親会社、頂新国際集団は、添加禁止の銅クロロフィルによる着色など偽装表示が罪に問われた大統長基食品廠、および廃油ラードの強冠からの調達が事件発覚当時に問題になり、わずか1年で調達先が3回も問題を起こしたことになる。

 頂新国際集団は調達、品質管理など食の安全を強化し再発防止に努めると説明した。しかし、事件のたびに食の安全が叫ばれる中、果たして調達品への検査強化を徹底したのか疑問が残る。

 一方、強冠の事件を受け、衛福部は大手油脂メーカーを調査している際、正義の調達先に問題があることを突き止め、先月18日に検察に捜査を依頼していた。また、23日には野党・民進党の立法委員が正義の製品の問題性および回収について江宜樺行政院長に見解を求めたところ、「現状では違法性がないため、回収しない」との答弁が示されていた。台南検察署は1年以上前から同社を捜査していたとされており、政府の回収指示は遅かったのではないかとの批判の声も上がっている。

自社生産に転じる業者も

 強冠の事件発覚後、調達先を正義に切り替えたばかりの業者も多く、ある業者は「誰に賠償請求できるわけでもなく、信頼は揺らぐ一方だ」と嘆いた。葱油餅に問題のラードを使用していたことが分かった餃子チェーン「五花馬」などは、ラードの自社生産に切り替え始めている。衛福部が先月16日に安全宣言を出した後の問題発覚だけに、「政府が製油工場を作ればいい」との皮肉の声も上がっている。