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《頂新食用油事件》幹部ら6人拘束、台湾食用油事業から撤退も


ニュース 医薬 作成日:2014年10月13日_記事番号:T00053204

《頂新食用油事件》幹部ら6人拘束、台湾食用油事業から撤退も

 頂新国際集団の傘下食用油会社、頂新製油(彰化県永靖郷)と正義公司(高雄市仁武区)が、家畜用の飼料用油脂や工業用油脂をラード(豚脂)など食用油製品の原料として使用していたとみられる事件で、検察当局は12日、頂新製油前総経理など幹部や取引先の経営者ら6人を食品安全衛生管理法違反などの容疑で拘束した。頂新集団はグループぐるみで違法行為に手を染めていた疑いが濃厚で、食品業者としてあるまじき非常識さに消費者の怒りは頂点に達しており、台湾で食用油事業を続けるのは困難になる見通しだ。


涙の謝罪会見を行った魏応充氏だが、もはや信頼回復は絶望的で、同情する消費者は誰一人としていないだろう(11日=中央社)

 拘束されたのは、頂新製油前総経理の常梅峯容疑者と品質管理組長の蔡俊勇容疑者の他、同社に飼料用油脂を供給していたベトナム・ダイハインフック(大幸福)社の経営者、楊振益容疑者(台湾人)、および正義に油脂を供給していた永成物料(嘉義県)の経営者、蔡鎮州容疑者ら。同じく正義に油脂を供給していた久豊油脂(嘉義県)の経営者、邱飛龍容疑者は保釈された。

 衛生福利部によると、頂新製油は2012年から現在までにベトナムから食用に適さない飼料用油脂計3,216トンを輸入しており、このうち2,000トン以上が既に食用油となって販売、消費されたとみられる。頂新製油は輸入の際「食用」と申告していたが、ダイハインフックは飼料用油脂しか輸出していなかった。また、頂新製油はベトナム側の工場を視察したことはなく、電話のみで発注を行っていた。 

 彰化地方法院検察署は11日に屏東県内埔郷にある頂新製油の工場の捜索を行った際、「配合法」なる資料を押収している。グループ上層部が家畜用飼料油脂から食用油脂製造を指示した重要な証拠となる可能性があり、捜査陣は同資料を注視している。

強冠と同じ仕入れ先

 一方、正義は、先月摘発を受けた強冠企業(高雄市大寮区)が工業用油脂を仕入れていた香港の商社、金宝運(グローバルウエー・コーポレーション)から、晋鴻貿易(雲林県)、久豊油脂、鑫好企業(高雄市鳥松区)といった企業を間に挟んで、同様に工業用油脂の供給を受けていたことが分かった。鑫好は正義の元特別販売処長の呉容合容疑者(51、拘束済み)が経営しており、同社が正義に供給する目的で晋鴻、久豊両社から調達した油脂製品は12年から現在までに計1,484トンに上る。

 正義の元従業員によると、正義はドイツから6,000万〜7,000万台湾元(約2億1,000万〜2億4,000万円)で購入した高さ28メートルの脱臭設備を使って原料の油脂を脱臭し、その上で食用油に使用していたという。こうした証言も、グループぐるみでの犯行をうかがわせる材料となっている。

3社董事長を辞任、工場閉鎖

 不祥事の発覚を受けて頂新製油、正義、味全食品工業の董事長を兼任していた魏応充氏は9日、辞任を表明。11日には謝罪会見を開き、「消費者の信用を回復するまでの間」頂新製油と正義の工場閉鎖すると発表し、台湾食用油市場からの撤退もあり得ると説明した。魏氏は涙を流して「責任逃れはしない」と強調したが、政府は法人登記の取り消し処分も含む厳しい姿勢で臨む方針と伝えられている。また、検察当局は今週中にも魏氏からの事情聴取を検討しているもようだ。


当面閉鎖されることになった頂新製油の屏東工場。ニュースで知って泣き出す従業員も少なくなかったという
(11日=中央社)

 なお、衛生福利部は12日までに、頂新製油の問題食用油54製品が味全、味丹企業(ベダン)など77業者の42品目に使用され、正義の問題食用油68製品は計222品目に使用されていることを把握した。衛生福利部は業者に対し12日午後6時までに関連製品を撤去するよう求め、13日以降も撤去されていない場合は、最高5,000万台湾元(約1億7,600万円)の罰金を科す方針だ。

 事件を受けて食品市場でラードが不足する状況を視野に、江宜樺行政院長は、13日よりラードの関税を現行の20%から10%へと急きょ引き下げると発表した。

 13日付聯合報によると、頂新製油以外にもベトナムから飼料用油脂を輸入していた企業がさらに3社あるという。飼料用油脂は1キログラム当たり20〜25元と価格が格安で、食用油メーカーの関心を呼んだもようだという。報道が事実であれば、事件は今後さらなる広がりを見せる恐れがある。