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《頂新食用油事件》頂新グループ、味全の経営権放出か


ニュース 食品 作成日:2014年10月15日_記事番号:T00053259

《頂新食用油事件》頂新グループ、味全の経営権放出か

 食用油事件の渦中にある頂新国際集団が、傘下の食品大手、味全食品工業の持ち株約40%を売却し、経営権を手放すとの観測が浮上している。味全は事件と直接の関係はないものの、台湾シェア首位の同社の牛乳ブランド「林鳳営」などが不買運動の矢面に立たされ存続自体を危ぶむ声が聞こえており、最悪の事態を避けるために頂新グループが手を引くことは現実的な判断と言えそうだ。同社広報担当は「ノーコメント」としている。15日付蘋果日報などが報じた。

 味全は食品業界で初めて上場を果たした創業61年の老舗企業で、統一企業(ユニプレジデント)に次ぐ業界2番手で、かつては「南の統一、北の味全」と評されていた。しかし、2代目経営者に交代後、経営不振にあえいでいた1998年に頂新グループに買収された。

 味全は「林鳳営」以外にもコーヒー飲料「貝納頌」、果汁飲料「毎日C」が高いシェアを誇る他、即席麺の「康師傅」、卵の「木崗専業牧場」など人気ブランド、商品を数多く抱えているが、今回の事件で不買運動に遭っている。商品回収は小売店から百貨店、飲食チェーンだけでなく、鴻海精密工業や台湾積体電路製造(TSMC)など大手企業の売店にも広がりを見せており、大打撃を受けている。株価は13日から連続ストップが続いており、きょう15日も取引開始直後にストップ安の25.35台湾元(約89円)に張り付いたままで引けた。9月以降の下落幅は42.3%に達した。

 食品業界関係者は、頂新グループが出資を引き揚げた場合、人気ブランドを多く抱える味全へ興味を示す企業は少なくないと指摘。引き受け先の企業として統一企業や義美食品(I-Meiフーズ)の名前が浮上しているが、両社はこれを否定した。

中国でも不買運動

 頂新グループに対する不買運動は、事業の本拠地である中国にも飛び火した。頂新グループの香港上場子会社で中国事業の8割を占める康師傅控股が手掛ける康師傅ブランドも、一部販売店で撤去され始めている。中国で生産しており、台湾からの食用油を原料に使ってはいないものの、中国メディアが同事件や台湾での不買運動を積極的に報道している影響とみられる。康師傅控股の株価も下落し、14日までに時価総額100億香港ドル(約1,400億円)が失われた。

 なお、問題製品を買わされた企業や消費者への賠償について江宜樺行政院長は14日の立法院での答弁で、既に頂新グループの経営陣、魏一族の資産差し押さえと凍結について必要な措置をとるよう法務部に指示しており、補償財源は心配ないと明かした。

南僑にも疑惑、表記ミスと反論

 15日は食品大手、南僑化学工業にも工業用油脂を食用油に混入させていた疑いが新たに浮上し、陳飛龍・南僑董事長が緊急記者会見を行った。


陳飛龍・南僑董事長は、同社の品質は過去も未来も全て問題はないと潔白を主張した(15日=中央社)

 桃園県衛生局は同日午前、同社が2013~14年8月にオーストラリアからヘット(牛脂)を輸入した申告書類12件のうち、5件の原産地証明に工業用と記されていたことから、工業用ヘットが食用に混入されていた疑いが強いとして、輸入元の公的書類などを至急提出することを求めた。

 これに対し陳董事長は会見で、食用と表記すべきところが工業用とされた「書類上の記入ミス」であり、輸入元のオーストラリアから食用であることを記した公的証明書を入手し、既に衛生福利部に提出したと説明。衛福部からも問題ないと判断されたとして、安全性を強調した。一方、工業用と偽り節税を図ったとの指摘については、税率は同じでありあくまで記入ミスと強調した。

 これに先立ち江行政院長は14日、頂新グループ以外にも違法企業があることを示唆しており、市場では「次の爆弾はどこか」と憶測が広がっていた。

【表】