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企業の対中投資意欲、5年連続で低下


ニュース その他分野 作成日:2014年10月21日_記事番号:T00053364

企業の対中投資意欲、5年連続で低下

 台湾区電機電子工業同業公会(電電公会、TEEMA)が中国に進出した台湾企業(台商)を対象に行ったアンケート調査によると、「中国で投資・生産を拡大する計画がある」と回答した台商は40.28%と5年連続で減少した一方、「台湾本社で生産・運営を続ける」との回答は47.12%と5年連続で増加し、両者の差は6.84ポイントへと昨年の0.22ポイントから大きく拡大した。中国の投資環境の悪化を受けて「中国見直し、台湾強化」の動きが加速しているようだ。21日付工商時報などが報じた。

 電電公会が20日発表した「大陸地区(中国)投資環境・リスク調査」(有効回答2,498件)によると、「中国で投資・生産を拡大する」と回答した台商は前年比で5.84ポイント減少。過去4年の減少幅は12.74ポイントに達した。一方、「台湾本社で生産・運営を続ける」と回答した企業は前年比0.78ポイント増加。過去4年の増加幅は9.92ポイントとなった。

 中国では過去10年で労働者の賃金が大幅に上昇し、既に労働集約型の産業にとって魅力的な投資先でなくなっている。また、労働者の権利意識向上に伴い労使トラブルの多発が伝えられている。同調査によると、中国での経済争議の発生率は3年連続上昇、争議解決の結果に対する満足度は4年連続で低下している。

 さらに、中国地場企業や海外企業との競争激化で、台商の経営パフォーマンスが3年連続で悪化している。「中国企業と合弁で経営する計画がある」と答えた企業の割合は今年9.23%と4年連続で増加した。台商は中国市場で孤軍奮闘するよりも、中国企業との提携によって優位性をつかもうと傾向が強まっているようだ。

「新規発展のための台湾投資」

 ただ、今回の調査結果について、弊紙で「台湾経済 潮流を読む」のコラムを連載する伊藤信悟・みずほ総合研究所アジア調査部中国室長は、「依然40%が中国での投資拡大意欲を持っており、決して低い数字ではない」との見方を示した。その上で、中国では既にある程度投資を展開してきた背景があり、新たな発展の契機をつかむために台湾で新しい事業に取り組む企業が増えている状況が数値に現れていると分析した。すなわち、投資環境の変化によって投資戦略の転換期が訪れているとの見解だ。

 今後の見通しについては、習近平政権は規制緩和や外資への市場開放への道を探っており、本格化した場合、台商の対中投資が再び拡大する可能性があると指摘した。

中国での上場支援を

 一方、台商は中国での投資メリットが低下した結果、▽インド▽タイ▽シンガポール▽マレーシア▽インドネシア▽カンボジア▽ミャンマー▽ブラジル──などの新興国へ投資を振り向ける傾向が出ている。

 電電公会理事長を務める正イ精密工業(フォックスリンク、イは山の下に威)の郭台強董事長は、台商の対中投資意欲低下の原因は、中国で十分な経営資金を集められず、規模で勝る中国企業や海外多国籍企業との競争で苦境に立たされているためと指摘。このため、台湾政府が台商の中国での株式上場を支援して、資本強化につなげるべきとの考えを示した。

【図】