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《頂新食用油事件》台北101副董事長を「解任」、頂新外しに疑問視も


ニュース 食品 作成日:2014年10月29日_記事番号:T00053523

《頂新食用油事件》台北101副董事長を「解任」、頂新外しに疑問視も

 頂新国際集団の魏応交董事長は28日、台北金融大楼(台北101)の副董事長兼総経理を辞任した。頂新グループの違法食用油問題が台北101のイメージダウンにつながると宋文琪董事長から辞任要求を突き付けられたのに応じたもので、事実上解任されたも同然だ。ただ、魏応交董事長は弟の魏応充容疑者による食用油事業と台北101は無関係と強調。産業界からも、政府が市民感情を持ち出し、食用油だけでなく、兄弟4人が経営する頂新グループ全体を台湾から締め出そうとしていることを疑問視する声が出ている。29日付経済日報などが報じた。


魏応交董事長は「夫婦間でも知らないことがあるのに、ましてわれわれは兄弟だ」と述べ、連帯責任を取らされた形となったことに不満の意を表した(中央社)

 台北101の董事会は同日、董事13人のうち財政部など政府系6人、頂新グループ2人、国泰金融控股1人が出席した。宋董事長は、頂新グループは董事会から出て行くべきだとして、▽第一商業銀行(ファーストバンク)が台北101の運転資金用の融資契約2億台湾元(約7億円)を継続しないと表明した▽台北101で抗議デモが起きた▽頂新グループのせいで、台北101の年越し花火のスポンサーが見つからない▽大口顧客から頂新グループを理由に台北101で買い物したくないと電話があった──の4点を理由に挙げた。魏応交董事長はこれまで辞任しないと主張していたが、同日午後2時になって自ら辞任を申し出た。辞任届は即日承認された。

 魏応交董事長は関係者を通じ、皆の声は聞こえているとのみコメントした。ただ、魏応交董事長は、頂新による台北101の経営参画後、オフィスの稼働率は90%に上昇、売り場のテナント出店は100%と実績が出ており、無関係の食用油事件で帳消しにされることが納得できないようだ。金融業界関係者は、銀行による融資引き揚げをにおわされ、魏応交董事長は辞任を受け入れざるを得なかったのではないと分析した。

 台北101は当面3カ月間、宋文琪董事長が総経理を兼任する。張盛和財政部長は、来年の台北101の董監事改選で民間株主と協力して過半の董監事席を取得すると述べた。出資比率7.73%の国泰金融控股に目を付けているようだ。

 行政院の孫立群報道官は、「台北101は台湾の重要なランドマークで、一切の陰りは許されない」と述べた。台湾を象徴する高層ビルだからこそ、政府は海外に与える印象も念頭に、強い姿勢で「解任」まで押し切ったとみられる。

既存融資は継続を=金管会

 財政部は政府系銀行に対し、頂新グループへの融資について、▽契約期限到来後に継続しない▽無担保の場合、与信限度額を引き上げない▽担保付き融資は担保の追加を求める▽利率を適度に引き上げる──ことを命じたとされる。

 一方、金融監督管理委員会(金管会)の曽銘宗主任委員は、銀行に対し、頂新グループの台湾の関連企業に対する借り換えを含む既存融資を引き揚げると経営が危うくなり、従業員、投資家、消費者の権益を損なうと指摘し、融資を継続するよう求めた。新規融資に関しては、赤道原則(エクエーター原則)に基づいて融資判断を行えばよいと語った。

 金管会の統計によると、頂新グループの台湾の関連企業に対する銀行融資は411億元、頂新グループ各社を経営する魏家の兄弟4人の個人に対する融資は69億元で、合計480億元だ。

 頂新グループのは28日夕方、協調融資(シンジケートローン)の主幹事銀行、兆豊国際商業銀行(メガ・インターナショナル・コマーシャル・バンク)に対し、融資申請の撤回を連絡した。兆豊銀行には同日までに、新規融資の参加銀行から融資額の4割に相当する脱退の申し出があり、成立が困難な見通しだった。一方、新北市三重区の土地開発に対する既存融資は、期限を迎える年末に条件見直しや更新するかを協議する予定だ。

「司法的手段で解決を」=経済日報

 財団法人消費者文教基金会(消基会)の張智剛董事長は、頂新グループの台北101の持ち株37%はそのままで、董事席も残っているので、騒ぎが収まったころに主導権を取り戻す懸念があると表明。黒心(悪徳)業者、商品の締め出しは今後も必要だと消費者に呼び掛けた。

 一方、経済日報は、政府は発言の影響力を利用するのでなく、予算を投じて株式を買い増すのが筋で、台湾は法治国家なのだから、司法が食用油問題を徹底調査して厳罰を下せばいいだけではないかと指摘し、「頂新締め出し」が無制限に広がりかねない社会の雰囲気に警鐘を鳴らした。

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