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復興機墜落事故、エンジン故障と操作ミスが原因か


ニュース 運輸 作成日:2015年2月9日_記事番号:T00055390

復興機墜落事故、エンジン故障と操作ミスが原因か

 復興航空(トランスアジア航空)の旅客機墜落事故は、故障に人為的ミスが重なって起きた可能性が出てきた。飛航安全調査委員会(飛安会)の調べによると、同機は台北松山空港を離陸直後に右翼の第2エンジンが停止したが、この4秒後に正常に稼働していた左翼の第1エンジンを止める操作が行われ、動力を失って墜落した。航空安全の専門家からは、この人為的ミスこそが墜落の主因との指摘が出ており、なぜこうした操作が行われたのか飛安会は引き続き解明を進める方針だ。蘋果日報などが9日までに報じた。


墜落はあり得ない人災によるものだったのか。台北松山空港では、離陸前の復興航空ATR72型機のエンジンを整備士が入念にチェックした(7日=中央社)

 飛安会が回収したブラックボックスとコックピットボイスレコーダーを解析して6日発表したところによると、復興航空の金門行きGE235便(ATR−600型機)は松山空港を離陸した直後の4日午前10時52分38秒、第2エンジンが停止する。その4秒後の52分42秒、第1エンジンへの燃料供給を遮断する操作が行われ、第1エンジンは53分24秒に停止した。乗組員は54分09秒に第1エンジンの再稼働に取り組み、54分20秒に動き始めたが既に間に合わず、54分36秒に基隆河に墜落した。

 これについて王興中・飛安会執行長は、「第1エンジンは正常に稼働していたのに、人為的に止められた」と指摘した。

 現段階で墜落原因には、「なぜ第2エンジンが停止したか」、「なぜ第1エンジンを止めたのか」、「機長、副機長、副操縦士の3人がコックピット内にいながら、なぜミスが防げなかったのか」の3つの疑問点が持ち上がっている。

 第2エンジンはわずか9カ月、1,260時間しか使用されておらず、離陸時には正常に稼働していた。その故障した第2エンジンには燃料供給を止めなかった一方、第1エンジンを止めた対応は最大の謎と言える。第1エンジンへの燃料供給を遮断する操作は、スイッチが中間にあるため、機長と副機長のどちらにも可能で、どちらが行ったのかは分かっていない。さらに、コックピット内にはオブザーバー役の副操縦士もいた。通常、こうした操作はミスを防ぐために機長と副機長が復唱して確認するが、フライト経験が豊富な機長以下3人がいてなぜこうした不可解な対応が取られたのか、コックピット内の役割分担はきちんと行われていたのかを含めて、飛安会が解明を進めることになる。

 なお、左プロペラ(第1エンジン)は静止していた一方、右プロペラ(第2エンジン)は動いておりエンジンの音もしたという墜落当時の目撃証言があり、飛安会の発表内容とは食い違っている。飛安会は今後さらに事故の分析を進め、30日後に初期リポートを、4カ月後に事実調査報告を、10カ月後に最終調査報告を提出する予定だ。

民航局、全パイロットをテスト

 交通部民用航空局(民航局)は事故機が正常なエンジンを止めた対応を問題視し、9日と10日に復興航空でATR機を操縦する全パイロット71人に対し、再度の訓練とテストを行うことを決めた。口頭試問で不合格判定の場合、運航停止処分と1カ月の再訓練を命じる。1990年代初頭に中華航空(チャイナエアライン)が受けて以来の、台湾航空業界で2例目となる異例の措置だ。

 これにより、復興航空は同社のみが運航している台北松山〜花蓮便を11日まで欠航とするほか、金門や澎湖の離島行きの便など16日まで計166便の運航を取りやめる方針だ。また、春節(旧正月、今年は2月19日)の台湾域内線運航への影響は必至とみて、同社は国際線のエアバス機を域内線に回すことを決めた。

安全改善計画、再提出へ

 復興航空の安全管理の在り方に厳しい目が注がれる中、林志明・民航局長は6日、同社への検査体制を強化する考えを示した。林俊良・同局標準組長は、昨年7月の澎湖での墜落事故後に同社が提出した安全管理の改善計画について、「いい加減過ぎて不合格な上、推進面でも今年6月にようやく第一段階の完了で遅過ぎる」と厳しく批判した。これに対し復興航空は、改善計画が求められる水準に達していないのは事実であり、民航局の指示に従って、再提出すると説明した。

 一方、行方不明者の捜索では7日新たに4人の遺体が見つかり、これにより確認された死者は40人となった。行方不明者は現時点で台湾籍1人、中国籍2人の3人だ。


捜索チームは1列になって河底に異物がないか確かめた。厳しい寒さの中、体調を崩す人も後を絶たないという
(8日=中央社)