記事番号:T00000077
● 間違いだらけの起業家学習法
起業しようと思われている方や既に起業されている方の学習方法をお伺いするたびに「せっかく頑張っているのに、努力の方向性が違うのでは?」と思っています。
起業する者が学ばなければならない事は、サラリーマン時代とはちょっと違います。
今回は起業家に必要な学習は何かを考えてみます。
起業して経営が軌道に乗るまでの分類には色々ありますが、私は以下の様に考えています。
●Stage1 起業前(次Stageへの境界線)→会社登記終了
●Stage2 家 業(次Stageへの境界線)→年間粗利2千万元(日本では1億円)
●Stage3 事 業(次Stageへの境界線)→社長が1ヶ月直接業務をしなくとも混乱しない
●Stage4 企 業
私の実体験も踏まえて考えますと、起業にも「個人起業」「社内起業」「投資を募っての起業」等様々種類があり、中国語で言う「白手起家」(裸一貫での起業)の場合は、特に上で紹介したステージ毎に学ぶべき事は違ってきます。
● 事例1:某薬局店主の場合
夫婦で薬局を経営している荘夫妻は、夫婦そろって勉強熱心であり、私が中国語で講演する小売業向けセミナーにはいつも参加して頂いていた。
ある日、旦那さんにお会いした時の事…
「最近、EMBA(台湾では社会人向けの夜間MBAクラスを設けている大学院が多い)に通い始めました。夜の店は家内に任せて、毎日通っているので2年間で卒業する予定です。経営学を学んでみると、奥が深く、今まで何も知らずに経営していたと思い知らされますよ。」
● 事例2:某コンサルタントの起業
京極氏は日本国内大手コンサルティングファームに10年勤めたコンサルタントである。
独立後、一緒に飲んだ時の事…
「今まで大企業の経営改革に沢山携わってきたし、主要な経営学も学んできた。私の様な小さな会社の経営なんて、苦労する筈が無い…」
● 解説
事例1は上記「Stage2」の状態です。
視野を広げるという意味では良いでしょうが、個人薬局の経営者がMBAの知識を学んでも、余程応用できるまで理解していない限り、直接経営に役立つ事は少ないと思います。
「Stage2」の段階では経営理論より、経営者としての感性が重要な部分を占めますので、理屈に捕われるより、深く考えたり、消費者を観察する等して経営者としての感性を磨く方が経営は早く立ち上がります。
事例2は私も含めて独立した多くの経営コンサルタントが、多かれ少なかれ思っていた事ではないでしょうか?
しかし、実際にクライアント先での経験や経営理論が役に立つのは、会社がある程度の規模に達してからです。
大企業と起業したての企業では同じ様に使う「経営」と言う一言であっても意味は全く違ってきます。
コンサルタント独立の多くは、その規模に達する前に廃業する事になりますので、これから独立を考えている方はご注意を。
ワイズコンサルティング 吉本康志