ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

第590回 反ダフ屋条項


ニュース 法律 作成日:2025年10月20日_記事番号:T00124748

知っておこう台湾法

第590回 反ダフ屋条項

 台湾の「文化創意産業発展法」には、いわゆる「反ダフ屋条項」が設けられております。この規定は、芸術文化イベントのチケットをめぐる投機的な転売行為を防止することを目的としています。

 一般個人の間では、この規制の厳しさが十分に理解されていない場合が多いのが現状です。特に「職業的なダフ屋のみが処罰対象になる」との誤解が広がっておりますが、実際には誰よりもごくわずかな上乗せであっても不正転売とみなされる点に注意が必要です。

■額面を超える転売禁止

 本法第10条の1では、チケットを「券面額または定価を超える価格」で販売する行為を一律に禁止しています。上乗せの額は問題とされず、台湾元で数元の加算や「飲み物を一杯奢ってほしい」といった名目であっても、違法と判断され得ます。実際の事例として、1枚2300元のチケット2枚を譲渡する際、「飲み物代」を加算しただけで、最終的に4万4900元の過料が科されたケースもあります。

 統計によりますと、過去1年間に摘発された案件のうち、9割が4枚以下のチケットを持つ一般個人でした。

 一方で、日本の「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」では、「興行主の同意を得ず、業として定価を超える価格で転売する行為」が禁止されています。規制の重点は「業として」に置かれているため、日本では非職業的な個人が大量に処罰される状況は少ないといえます。

■通報すれば報奨金

 さらに台湾特有の事情として、検挙の背景に「通報制度と報奨金」が存在する点も重要です。本法に基づく規則では、通報者は科された過料の20%を上限10万元まで報奨金として受け取ることができます。こうした制度が通報を促進し、その結果、非職業的な個人が多数処罰される要因となっていると考えられます。

 以上、台湾においてチケットを譲渡する場合、一般個人にとって日本以上に厳格な規制と処罰リスクが存在するため、ご留意されることが必要です。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

鄭惟駿弁護士

鄭惟駿弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

陽明大学生命科学学部卒業後、台湾企業で特許技術者として特許出願業務に従事した後、行政院原子能委員会核能研究所での勤務を経験。弁護士資格取得後、台湾の法律事務所で研修弁護士として知的財産訴訟業務に携わる。一橋大学国際企業戦略研究科を修了後、2017年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

知っておこう台湾法