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第593回 債務者への民事強制執行


ニュース 法律 作成日:2025年11月10日_記事番号:T00125189

知っておこう台湾法

第593回 債務者への民事強制執行

 台湾において、債権者が債務者に対して民事上の強制執行を行う場合の主な手続は以下のとおりです。

一、まず、債権者は債権の存在を証明する公文書である「執行名義」(日本の「債務名義」に類似)を取得しなければなりません。強制執行法第4条第1項によれば、「執行名義」には次の6種類が含まれます。

1、確定した終局判決。

2、仮差押え、仮処分、仮執行の裁判およびその他民事訴訟法に基づき強制執行を行うことができる裁判。

3、民事訴訟法に基づき成立した和解または調停。

4、公証法の規定に基づき強制執行を行うことができる公正証書。

5、抵当権者または質権者が、抵当物または質物の競売の申立てをし、裁判所により強制執行を許可する決定がなされた場合。

6、その他、法律の規定に基づき強制執行名義となり得るもの(例えば、郷鎮市調停条例第27条第2項に基づき作成された調停調書)。

二、次に、債権者は自ら債務者の財産状況を調査しなければなりません。一般的な方法は、債権者が上記一の「執行名義」を所持し、台湾の国税局に債務者の財産目録を申請することです。もっとも、国税局で取得できる債務者の財産情報は、銀行預金、株式、自動車、家屋などの登記済み財産に限定され、動産などの登記されていない財産については国税局から取得することができません。

三、続いて、債権者は二の調査結果に基づき、債務者の特定財産に対する強制執行を裁判所に申請します。例えば、債務者に家屋があることが判明した場合、「当該家屋の差押え+当該家屋の競売+競売代金の債権者への交付」を裁判所に申請することができます。

四、三を執行した結果、債権者の債権が全額回収された場合、強制執行手続は全て終了となります。一方、執行後、債権者の債権の一部または全部が回収されなかった場合、裁判所は回収されなかった債権額について債権証書を債権者に発行します。これ以降、債権者は当該債権証書をもって、上記二、三の手続を債権が全額回収されるまで継続して行うことができます。

 実務では、多くの債権者が強制執行の手続や債権の時効などを十分に把握していないために、債権の回収が困難になる問題が発生していますので、豊富な実務経験を持つ法律の専門家に必ずご相談ください。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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