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第79回 ホルムズ海峡封鎖、台湾の先見性と脱原発のジレンマ


ニュース 社会 作成日:2026年3月23日_記事番号:T00127510

ワイズニュースこぼれ話

第79回 ホルムズ海峡封鎖、台湾の先見性と脱原発のジレンマ

 米国時間3月19日の日米首脳会談で、高市早苗首相とトランプ大統領は、アラスカ産原油の増産協力や次世代原子炉の小型モジュール炉(SMR)建設などの対米投資で合意しました。一方、台湾では頼清徳・総統が21日、台湾電力(台電、TPC)が原子力発電所の再稼働の準備を進めていると説明しました。

 これらのニュースを見て、台湾の25年5月の脱原発や、25年3月のアラスカ産の液化天然ガス(LNG)調達合意、20年5月のファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)のアリゾナ工場建設発表を思い出しました。

■卵は一つのカゴに盛るな

 個人投資家が多い台湾では「卵は一つのカゴに盛るな」というリスク分散のことわざをよく耳にします。台湾は輸出の中国依存度が4割と高かったのですが、民進党の蔡英文・政権(2016年5月~24年5月)は、中国の圧力が強まり、東南アジア投資を拡大する「新南向政策」を推進し、米国との関係を強化しました。直後に発足した第1次トランプ政権(17年1月~21年1月)で米中貿易摩擦が勃発し、各国より早く「脱中国」を進めていた台湾の打撃緩和につながりました。

 近年、同様に先手が功を奏したと感じたことがいくつかあります。第1次トランプ政権下の20年5月に、TSMCはアリゾナ工場建設を発表し、進めてきました。第2次トランプ政権(25年1月~)の相互関税引き下げ交渉で、台湾は26年1月、相互関税を15%に引き下げるとともに、輸出の7割近い半導体関連の関税に関する優遇措置を勝ち取りました。

米国と相互関税15%で合意
https://www.ys-consulting.com.tw/news/126411.html

 25年3月には、台湾中油(CPC)がアラスカ産LNG開発・購入に向けた基本合意書(LOI)を締結しました。今回のホルムズ海峡の事実上の封鎖で、台湾はLNGの3割を中東から輸入していたため、火力発電燃料の主力のLNG不足が懸念されましたが、既に4~5月分のLNGをほぼ確保し、6月からは米国からのLNG輸入を拡大することになりました。

CPC、アラスカ州からLNG調達へ
https://www.ys-consulting.com.tw/news/120730.html

■エネルギー安全保障

 ただ、中国依存が米国依存に転換するだけなら、リスク分散とはいえません。こうした中、「脱原発」は現在、現実路線に修正の舵が切られています。

アジア初の原発ゼロ実現、火力発電増加
https://www.ys-consulting.com.tw/news/121743.html

 日本は原発稼働を続けた一方で、台湾は東日本大震災をきっかけに脱原発を推進し、風力発電を拡大するも予定通り進まず、石炭火力発電を減らしてLNG火力発電を5割まで引き上げていました。AI(人工知能)で電力需要が予想外に急増する中、ホルムズ海峡封鎖が起こり、原油・LNG不足や価格高騰、電力不足リスクに緊張が高まりました。産業団体は電力安定供給のため原発を繰り返し求めてきましたが、突如現実味を帯びました。

 昨今の状況を在台日系企業はどのように捉えているのでしょうか。ワイズリサーチ緊急調査結果をご参照ください。

【緊急調査】《2026年在台日系企業ホルムズ海峡封鎖による影響と対応実態》
https://www.ys-consulting.com.tw/news/127479.html

青木樹理

青木樹理

ワイズメディア

日本、台湾での金融機関勤務を経て、ワイズニュース創刊年の2007年に入社。副編集長を経て20年より編集長。台湾経済・産業の動向を分かりやすくお伝えするため、台湾社会をウオッチしながら生活しています。

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