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第621回 台湾相続法における「特留分」


ニュース 法律 作成日:2026年6月15日_記事番号:T00129052

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第621回 台湾相続法における「特留分」

 台湾法務部が6月2日に「民法相続編の一部条文の改正草案」(以下「新法」といいます)を公表しました。新法に関して社会から最も注目を集めている焦点は、民法第1223条における兄弟姉妹の特留分に関する規定を削除し、遺言によって遺産を処分する個人の自由を大幅に向上させた点です。

■最低限の相続割合

 いわゆる「特留分」(日本の「遺留分」に相当)とは、相続人を保護するために法律で定められている「最低限度の相続割合」のことです。「特留分」を有する相続人については、被相続人が生前に遺言書を作成し、その全財産を特定の者に与えるとした場合でも、不公平な遺言による分配を防止するため、当該「特留分」の保護を受ける相続人に対する一定割合の遺産が法律によって強制的に留保されます。

 現行の台湾民法第1223条では、「相続人の特留分は、以下の各号の規定による。一、直系卑属の特留分は、その法定相続分の2分の1とする。二、父母の特留分は、その法定相続分の2分の1とする。三、配偶者の特留分は、その法定相続分の2分の1とする。四、兄弟姉妹の特留分は、その法定相続分の3分の1とする。五、祖父母の特留分は、その法定相続分の3分の1とする」と規定されています。

 例えば、甲には妻の乙がおり、子はおらず、兄の丙と姉の丁がいるとします。甲が6000万台湾元の財産を残して死亡した場合、甲が遺言書を何も作成していなければ、台湾民法第1144条により乙の法定相続分は2分の1となり、3000万元の遺産を取得し、丙と丁の法定相続分はそれぞれ4分の1となり、それぞれ1500万元の遺産を取得することができます。

 一方で、甲が生前に「すべての遺産を妻の乙に与える」という遺言を残していた場合、現行の台湾民法第1223条によれば、丙と丁は特留分による保護を受けるため、依然として法定相続分の3分の1、すなわちそれぞれ500万元の遺産を取得することができます。

■兄弟姉妹の特留分を削除

 上記の規定は、数十年前の家族関係が緊密であった農業社会においては特に大きな問題はありませんでした。しかし現代社会においては、たとえ兄弟姉妹であっても、成人後はそれぞれが家庭を持ち、共同生活を送ることはなく、一般的にお互いの世話をすることもなく、関係が疎遠になっていることが多いです。このような状況下で、甲が遺言によって「すべての遺産を妻の乙に与える」という意思を明確に示しているにもかかわらず、法律によって強制的に遺産の一部を丙や丁に与えることは、明らかに甲の意向と利益に反します。これが、新法において兄弟姉妹の特留分が削除された主な理由です。さらに、過去の遺産分配において家族の分裂を引き起こす原因として最も多かったのは、金銭的、労力的な負担をしてきた人が、最終的に、親など年長者のことに一切関知してこなかった親族と同じ額の遺産を受け取ることでした。

 例えば、寝たきりの父親Aを台湾にいる子Bがずっと介護しており、Aの他の子であるC、D、Eはすでにアメリカへ移民していましたが、Aが死亡した際、C、D、Eはすぐに台湾へ戻り、遺産を平等に分けるよう要求したとします。現行の民法の規定の下では、Aの介護を全くしておらず、金銭的な負担もしていないC、D、Eにも遺産を平等に分ける権利があり、これは明らかに不公平です。

 長年にわたるこの課題を解決するため、新法では第1173条の1に「相続人の特別貢献制度」が導入され、相続人の中に被相続人の療養看護を行った者、またはその他の方法で被相続人の財産の維持や増加に対して特別な貢献をした者がいる場合、遺産分割の際に、その特別貢献の評価額を該当する相続人の法定相続分に加算することが明確に定められました。

 法務部は、新法によって「遺言の自由の尊重」、「実質的な公平性の促進」という目標が達成されることにより、相続法制が現代社会の実際のニーズにしっかりと応えていくことを期待していると説明しています。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

蘇逸修弁護士

蘇逸修弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

台湾大学法律学科、同大学院修士課程法律学科を卒業後、法務部調査局に入局。板橋地方検察署で、検事として犯罪調査課、法廷訴訟課、刑事執行課などの業務を歴任。2011年より黒田法律事務所にて弁護士として活躍中。

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