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第616回 いつの間にやら優先席


ニュース 法律 作成日:2026年5月11日_記事番号:T00128372

知っておこう台湾法

第616回 いつの間にやら優先席

 台湾を訪れる旅行者を主な視聴者層としたSNS動画等では、「台湾の公共交通機関には『博愛席』(中国語:博愛座)が設けられており、日本とは異なり、満員時であっても当該座席に着席する人が比較的少ない」といった内容が取り上げられている例が見受けられます。

 実はこの「博愛席」、昨年「優先席」へと名称が変更されたのはご存知でしたでしょうか。

■博愛席を奪い合い

 台湾では従前、博愛席を巡るトラブルが頻繁に報道されていました。その内容としては、高齢者が博愛席に座っていた若年の視覚障碍者を罵った事案や、腹痛を理由に博愛席の利用を申し出た若者に対し高齢者が暴力を振るった事案のほか、逮捕者が出るに至ったケースすら存在しました。

■必要な人のために

 このような事態を受け、交通部(日本の国土交通省に相当)は昨年、「公共交通機関におけるバリアフリー設備設置弁法」(中国語:「大眾運輸工具無障礙設施設置辦法」/以下、単に「本法」といいます)を改正し、その一環として、「博愛席」は「優先席」へと名称が改められました。また今回の改正では、優先席の優先利用対象者は、「身体障碍者またはその他実際の必要がある者」であることが明記されました。このほかにも、一部の利用者が博愛席の利用対象者を誤解し紛争が生じることを防止することを目的として、優先席マークが新設されました(本法第5条第3号)。当該マークでは左から順に、「高齢者、妊婦、移動困難者、幼児同伴者およびその他実際の必要がある者」がピクトグラムで図示されており、優先席の設置に際しては、目立つ場所に当該マークを表示することが義務付けられました。

 交通部は、「優先席は必要とする全ての人のためのものであり、一時的な体調不良や外見からは判別できない潜在的なニーズを有する者も利用可能である」旨強調しています。日本でも、約50年前に、「シルバーシート」から「優先席」へと名称変更が行われた歴史があります。名称は変われども、これからも博愛の精神で譲り合い、必要時には積極的に利用したいものです。

 

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。

秋口麻貴弁護士

秋口麻貴弁護士

黒田日本外国法事務律師事務所

高校時代に参加した弁護士の講演がきっかけとなり、国際的に活躍できる法曹を志す。高校卒業後、台湾の大学に進学し中国語の習得並びに国際感覚の涵養に励む。在学中は積極的に日台比較法研究会への参加、現地の法律事務所でのインターン等を通して自身の法律知識を深めた。台湾法のみならず、様々な法分野においてクライアントに寄り沿うことができる弁護士を目指し、日々研鑽を積んでいる。

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