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第165回 職場におけるセクハラ


ニュース 法律 作成日:2014年9月10日_記事番号:T00052588

産業時事の法律講座

第165回 職場におけるセクハラ

 「両性工作平等法」から改正された現行の「性別工作平等法」(男女雇用機会均等法に相当)は、職場における性差別とセクシャルハラスメントの防止、および女性の就業権を保障するための法律です。

 この法の規定によると、職場におけるセクハラには以下のものが含まれます。

1)被雇用者の職務執行中に、他者が性的要求または性的意味もしくは性的差別の意味を持つ言語、行動を示し、被雇用者が敵意、脅迫、冒涜(ぼうとく)などを感じる職務環境に被雇用者を置くことにより、被雇用者の人格の尊厳、人身の自由または職務上の表現を侵犯、邪魔すること。

2)雇用者が被雇用者、または求職者に対して、明示的または暗示的な方法により、性的要求または性的意味もしくは性的差別の意味を持つ言語、行動を示し、それをもって労務契約の成立、存続、または作業分配、報酬、作業評価、人事異動、賞罰などの交換条件とすること。

セクハラ放任で罰金最大50万元

 また、被雇用者が30人を超える職場では、セクハラ防止規定を設けなければならず、雇用者がセクハラの発生を知った場合には、適切な処置を取り、その責任を追究しなければならないとも規定しています。もしこれらの規定に違反した場合、10万〜50万台湾元の過料が科せられる他、会社名が公表されます。さらに、もし職場でセクハラが発生した場合、雇用者と行為者は連帯責任を負わなくてはなりません。

 台湾では過去に職場のセクハラに関する案件が少なからず発生しています。今回は3つの案件を紹介します。

 永豊金租賃(シノ・パック・リーシング)で2004年に発生したセクハラ事件では、原告である法務部部長が、職場や出張先で既婚の同僚からセクハラを繰り返し受けていたにもかかわらず、会社がそれを適切に処理しなかったため、労働契約を終了し、退職手当を請求しました。

 最高裁判所は09年末の判決の中で、以下のような判断を示し、退職手当を請求することはできないとしました。▽既婚の同僚は、過去に原告と密接な交友があり、また原告の抜てきによって昇進もしたが、その後2人の関係は冷めた▽原告の言うセクハラ行為は、2人が別れた後に行われたものであるが、両者が当該期間内に一緒に出張したという記録は存在しない▽セクハラ発生当時にその訴えを受けた人事部長は、次の日に書籍「羅生門」を原告に渡すことで、会社はセクハラを処理しないことを暗示した▽原告は規定の30日以内に労働契約を終了しなかった──。

服装に関するセクハラ?

 衡美室內裝修企業(ダイナスティ・デザイン)は11年にイラストレーターを雇用しましたが、試用期間中の評価が芳しくないことを理由に、3カ月後に同イラストレーターを解雇しました。

 その後の離職面談の際、同イラストレーターは会社に対して「同僚である女性A、Bと社内でおしゃべりをしている際、2人に『いつも体の線が出るような運動着を着て仕事に来ているけど、専門職としてどうなの?』と評論された。これはセクハラだ」と訴えました。しかし、会社側は何の対応も行わなかったため、同イラストレーターは台北市性別工作平等会に対してこの問題を訴えました。その結果、会社は20万元の過料を科せられたため、裁判所に対して処分の取り消しを求める訴えを起こしました。

 台北高等行政裁判所は審理の結果、以下のように判断し、原処分を取り消しました。▽台北市性別工作平等会は女性Aと女性Bに当該イラストレーターが試用評価に合格するかどうかを決定する権利があったかどうかを証明していない▽2人が「性的要求または性的意味もしくは性的差別の意味を持つ言語」を発したかどうかも証明していない▽当該イラストレーターは2人の発言後も服装を変えることなく、3日後に「襟が大きめの服」を着てきただけで、当該発言の影響を受けたとは言えない──。

セクハラ=解雇が行き過ぎの場合も

 中華科技大学(台北市)は09年、学生に対するセクハラを理由に建築学科の講師を解雇しました。

 これに先立つ02年8月23日、同校の「セクハラおよび性侵害処理委員会」は当該講師のセクハラを認定、同9月5日に当該講師に対して「重大なミスの記録1回、停職1年」の処分を下しました。

 これに対し当該講師は同校の「抱怨(苦情)処理委員会」に訴えを起こし、同委員会は原判断を「小さなミスの記録2回」に変更、その後03年3月31日に「処罰を行うことはない」との決議を下しました。結果、同校は原処分を取り消しました。

 中華科大は05年5月5日、「校教評会」の決議に従い、当該講師を解雇するため、教育部に同意を求めましたが、当該講師の訴えを受けた教育部は、中華科大に再調査を命じました。そして4年後の09年5月7日、教育部は同校が新しく設置した「性別平等委員会」の調査報告に基づき、当該講師の解雇を認可しました。当該講師は裁判所に対し解雇が無効であることの確認と、給与の賠償を求める訴えを提起しました。

 最高裁判所は13年8月の判決の中で以下のような判断を示しています。▽学校の解雇が有効かどうかを認定することは裁判所の職権範囲内である▽高等裁判所は解雇が教育部の認可を受けたものであることを理由に有効であると判断したが、そのような判断は不当である▽中華科大は当該講師に対して既に「重大なミスの記録1回」の処分を下しているが、セクハラの被害者はそれに対して何らの不服も訴えていない。それにもかかわらず当該講師に対して「解雇」という原処分より重い処分を下すのは、「不利益変更の禁止」という法律原則に違反した──。

 これらは決して代表性のある案件ではありません。また多くの案件において訴えられた側が男性である場合、どのような理由を並べても罰を受けることになります。特に学校で発生したセクハラに関しては、裁判所で逆転勝訴することはほとんどありません。このような現状において、企業がどのようにセクハラを防止し、またセクハラが発生してしまった場合にどのように処理すべきかは、皆さんも注目すべき法律問題でしょう。 

徐宏昇弁護士事務所

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