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第169回 知的財産局の独断を批判


ニュース 法律 作成日:2014年11月26日_記事番号:T00054029

産業時事の法律講座

第169回 知的財産局の独断を批判

  日本企業のコーセーは、2011年12月末に経済部智慧財産局(知的財産局)に対して立体商標「雪肌精」の登録を申請しました。当該商標は以下の内容の組み合わせから成る連合式商標でした:中国語文字には「薬用」、「雪肌精」、外国語文字には「MEDICATED」、「SEKKISEI」、「KOSE」を使用。形状は表、裏ともに扁平状、左右両側は楕円(だえん)形、4面約150度の角度を持つ柱状の立体形状。白色キャップ上部は銀色の鏡面仕上げ。色は透明性のあるディープブルー(琉璃色)の瓶に青、白、銀の色の組み合わせ。

 智慧財産局は審査の結果、以下の通り認定し、13年11月付で同申請を棄却しました:

 本件商標の文字には「薬用」、「MEDICATED」など指定商品の直接的な描写が含まれ、立体形状と色の組み合わせによる包装容器は一般の業者が使用するものである。

 コーセーが提出したニールセンによる市場調査報告については、全体サンプルの客観性と、データの公正性に疑問が残るため、本案判断の根拠として採択できない。

 コーセーが販売データ、広告費用、プロモーション活動などを挙げ、「どの資料にも文字と図形商標が使用されている」としたことは、本件商標の知名度を証明する根拠とすることはできない。

 本件商標の色使いが商標登録された場合、同業他社の色の使用に影響が出る他、指定商品に瑠璃色/ディープブルー系の色を使用して商品を包装する自由を害する恐れがある。

十分な識別性を認める

 コーセーはこの判断を不服として、経済部に訴願を提出、14年5月にその訴えも却下された後、智慧財産法院(知的財産裁判所)に対して訴訟を提起しました。智慧財産法院は11月6日に本件商標の登録を認める判決を下しました。

 智慧財産法院の判決文は長いですが、商標本来の「先天的識別性」については、以下のように認定しています:

 本件商標の立体形状と色の組み合わせによる設計は視覚上の美感を備え、その外観は消費者に特殊な感覚を感じさせることで、他社商品と区別するに十分なものである。

 同業者の製品の包装の多くが円柱形、楕円曲線の円柱形、円すい形、楕円曲線の円すい形であることに比べ、本件商標の立体形状と色の組み合わせは他社製品と明らかに区別され、商品の出どころを識別するに十分である。

 よって、本件商標の文字、図形、色、および立体形状などの組み合わせによる連合式商標は、全体的に見てその特殊性が認められ、消費者が商品の出どころを識別するに十分であると判断する。

 また、「後天的識別性」に関して判決は、▽本件商標はコーセーが長期にわたり広く使用しており、販売数量も多い▽長期にわたる広告、商品の販売を行っている▽販売拠点を多く設けている▽主要各国で商標登録が認められている▽多くの割合の消費者が当該商標を認識している▽コーセーが提出した市場調査報告には専門性と信頼性がある──などを理由に、後天的識別性を認める判断をしました。

「わがままな行政行為」

 また、判決は、「二つの商標が類似性を持つかどうかの判断は、文字、図形、立体形状、および色の組み合わせ全てから考慮する必要がある。青色の瓶で銀白色のキャップを使用しているだけで近似する商標と認定することはできない」と、智慧財産局の審査、意見の甘さを指摘しました。

 また、「いわゆる恣意(しい)的な者というのは、わがまま、独断的で根拠がなく、かつ個人の好みによって物事を判断することを指す。そのような行いは行政行為としての適切さを欠くものである。法律は原則として恣意的な行為を禁止しており、故意の恣意的行為だけでなく、憲法の基本精神、および物事の本質に客観的に違反する行為も禁止している」と、強いトーンで智慧財産局を批判しました。

 さらに判決は、「立体商標は非伝統的な商標である。現実の市場取引においては、文字および図形商標を取り除き、立体商標のみで商品の販売を行うことは難しい」と指摘。消費者が熟知しているのは連合式商標としての本件商標であることから、智慧財産局は、当該商標の使用資料の中に文字商標または図形商標が含まれることのみを理由に、当該商品の販売、プロモーション資料が本件商標に関するものではないと判断することはできないとしました。

 商標を申請したことがある人は、智慧財産局の商標審査のあまりの遅さと、その独断的な判断に強い印象を受けたことがあると思います。今回の智慧財産法院の判決は、智慧財産局の商標認定が、わがまま、専断的で、かつ個人の好みによって物事を判断していることを強く批判しました。この判決を機に智慧財産局が反省し、その審査の質が高まることを願ってやみません。

徐宏昇弁護士事務所

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