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第170回 Uberへの政府の対応


ニュース 法律 作成日:2014年12月24日_記事番号:T00054576

産業時事の法律講座

第170回 Uberへの政府の対応

 スマートフォンアプリを通じた高級リムジンタクシー配車サービス「Uber(ウーバー)」に対し交通部公路総局はこのほど、公路法違反で今年の9月からこれまでに18回の罰金処分を下し、罰金の総額は100万台湾元を超えるといわれています。しかし、Uberはそんなことはお構いなしに、30%引きキャンペーンを打ち出してきました。

 政府の言い分を見る限り、Uberが違反したとされる「公路法」とは、公路法77条3項後段の規定「本法の規定に従った申請・許可を受けずにタクシー客運サービス業を営んだ場合、5万元以上、15万元以下の過料を課し、その営業の停止を命じる」のようです。

 公路法の規定によると、タクシー営業と関連する業種には
タクシー客運業:規定された地域内で、小型車両を貸し出し、顧客を乗せる事業
タクシー客運サービス業:タクシーによる客運サービスにより報酬を受ける事業
が含まれまています。前者はいわゆる「ハイヤー」で、後者は「タクシー会社」に似た概念となっていますが、公路局は、Uberが経営しているのは後者、つまり「タクシー客運サービス業」と認定しています。

「Uberは運輸業者ではない」

 しかし、Uberのホームページの記載を見る限り、Uberは自らを「タクシー客運サービス業」であるとは認識していないようです。Uberの利用者がアプリを登録する際に同意しなければならない「使用者約款」には、「Uberは運輸業者ではないため、運輸サービスまたは流通サービスを提供しない。アプリを通じて提供されるサービスは全て、第三者により提供されUberはそれら第三者に対して何らの担保責任も負わない」と記されています。

 また、Uberの会員はクレジットカードで料金を支払いますが、それら会員からの支払いを受けたカード会社はまずUberに対して支払いを行い、Uberからドライバーに対して料金が支払われます。そのため、「Uberは単にタクシーサービスを紹介するだけで、客運サービスに全く関わらない」というUberの言い分には疑問が残ります。そのため、もしUberが交通部の過料処分について訴願を提起し、また将来訴訟を提起した場合の結果は、容易に予想がつくものではありません。

 交通部のUberに対する反応は、その他多くの国・地域と同様でした。つまり、「Uberのようなインターネットを利用したタクシー配車サービスが使用している車両は、タクシーとしての登録を受けているものではないため、交通管理関連法規に違反しており、許すわけにはいかない」というものです。具体的に、交通部が発表しているコメントは「Uberによる配車サービスは、タクシー運転手としての免許を持たない不法な運転手による客運サービスであるため、運転手の経歴を保証することはできず、安全性が懸念される」というものです。しかし、そんな言い分には何の根拠もありません。

 サービス内容という点から見た場合、Uberの配車サービスは、ホテル・航空券の予約代行と何らの違いはありません。違う点があるとすれば、Uberが使用しているのはタクシー運転の免許を持っていない運転手だということだけです。確かに、Uberの車両は等級の高いものですが、そのサービスの提供方法は、各国・地域政府のタクシー制限制度に真っ向から立ち向かったものであることは間違いありません。

 タクシー制限制度の根拠は、公路法39−1条1項の「タクシー用ナンバーは各県・市の人口および道路面積の成長比率を基に発行される」という規定です。政府はこの規定により、タクシーの総数を規制し、運転手の収入を保障しています。また、値引き合戦などの不当な競争の発生を防いでいるわけです。

生かされない教訓

 交通部のUberに対する今回の対応からは、政府が今日に至ってもまだ、以下の2つの教訓を生かしていないことがうかがえます。

1.先日行われた統一地方選挙の際、与党(国民党)側は、新聞や雑誌などの従来型メディアを利用し、有権者に対して「与党の候補者に投票しなければ、台湾の経済は地に落ちる」というような洗脳を行うことに力を注ぎました。しかし、こうしたメディアの影響を受けなかった若者たちが与党に投票しなかったため、与党は各地で前代未聞の惨敗を喫しました。

2.政府は高速道路料金の支払いを全面電子化することを決定し、全ての料金徴収員を解雇することにしました。また、電子化業務を請け負っている遠通電収(FETC)は徴収員に再就職案を提示しましたが、彼らはそれに同意せず、大規模な抗議活動をするに至っています。

 さて、もし誰もがアプリで配車を依頼することができ、またその車両がどれもタクシーよりもグレードの高いものであり、なおかつ料金がタクシーより安いとしたならば、既存タクシー会社の業績がガタ落ちすることは火を見るよりも明らかです。

 もし、台湾が国際的な競争力を強化したいのであれば、インターネットの普及と技術の発達は一つの強力な選択肢です。本来であれば、政府はUberの参入を契機と捉え、インターネットアプリと関連技術を生かし、タクシーおよびその他のサービス業のネットワーク化を促進し、皆が利益を得ることができるように努力すべきなのです。残念なことに、古い考えに縛られている政府にはそのような考えは全くありません。結果として、このような新しい商機を逃してしまうことになるのでしょう

徐宏昇弁護士事務所

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