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第177回 違法品のインターネット売買


ニュース 法律 作成日:2015年4月8日_記事番号:T00056285

産業時事の法律講座

第177回 違法品のインターネット売買

 インターネットの普及により、多くの商業行為がインターネット上で行えるようになったことに伴い、国際的な物流取引と少額の支払いの利便性が格段に向上しました。しかし同時に、違法な物品や、模倣品などが、これまでにはなかった方法によって国境を超えて販売されるようになってしまいました。

 もちろん、完全デジタル化されているものを除き、違法な物品であろうが、模倣品であろうが、必ず運送が必要になります。また金銭の支払いと受け取りもまた必須です。つまり、インターネット上での販売であっても、理論上はこれまでのように商店やデパート、果ては露店でのそれと何らも変わりはないのです。そのため、調査の方法もこれまでとは変わることはないはずなのですが、インターネットで違法な物品や模倣品が販売され、訴訟にまで至った場合の裁判所の認定はそうではないようです。

運送代行、違法品と知っていたか?

 2014年6月、知的財産裁判所は、「上興国際有限公司(以下「上興」)」に関する判決で、運送代行および代金回収を行う企業は、違法な物品または模倣品の販売の故意を構成しないと判断しました。

 この案件は、10年9月には台中県(現台中市)衛生局、11年1月には保智(保護知的財産権)警察が、運送代行および代金回収を行う企業である上興において、中国から輸入された偽の薬品と、2,000枚以上に及ぶ海賊版CD−ROMを押収したことに起因します。被告は、▽上興は運送代行業を行っていただけで、顧客が販売していたものが偽の薬品や海賊版CDであったことは知らなかった▽押収された物品は、上興のものではなく、全て搬送後に受取人から受け取りを拒否されて返品されてきたものを倉庫に保管していただけである──と主張しました。

 これに対して、第一審の台北地方裁判所は無罪判決を下しましたが、検察は、▽押収当時、「返品」された物品の包装は、その多くが破損しており、その外見からも偽の薬品や、海賊版CDであることは明らかであった▽「返品」された物品の売り手は全て同じであることからも、被告は運送代行を行っている物品が偽の薬品や、海賊版CDであることは知っていた──として控訴しました。

 第二審の知的財産裁判所は以下のような認定の下に控訴を棄却しました。

1. 押収された物品の包装に記載されていた「品名」には「片」「薬品」「表」などとの記載があるが、「片」「表」という表示は各種物品を指すことができ、また「薬品」についても、合法な「薬品」である事も考えられる。被告は「片」とは海賊版CDであり、「薬品」とは偽の薬品であり、「表」が商標を侵害している腕時計(中国語:手表)であることを知ることは可能なのか?

2. 被告が「運送代行」を行う物品について、それを違法な物品だと認識していたかどうかの最も重要な証拠は、代行運送の委託者(物品の売り手)が「被告および上興に対して運送を委託した物品が偽の薬品や模倣品、または海賊版CDであることを具体的に説明した」ことを明らかにすることであるが、当該人物は現在指名手配中である。

3. 被告は検察による取り調べ中に犯罪事実を認めているが、同時に「包装を開けることはない」「配達人も包装を開けることはない」などと証言していることから、被告の行った「包括的自白」は犯罪事実を認めたことにはならない。

サーバー提供は共犯でない?

 また、14年4月の案件では、知的財産裁判所が、サーバーの置き場所を提供している人物は共犯とはならないと判断しています。この案件は、台中市の企業「網路世界有限公司(以下「網路」)」が「TWNCI」という名称のサイトを設置し、台湾を含む各国のドメインネームの登録を代理していたことから、台湾網路資訊中心(TWNIC)から商標権侵害で告訴され、責任者の王雪琴氏が起訴されたというものです。被告は、▽当該サイトは娘婿で米国人のRonald Gilcher氏が設置したものである▽Gilcher氏は中国語が分からず、自身も英語は喋れない▽娘と娘婿が米国に移住した後は、王氏が名義上の責任者となっていた▽自身は会社の業務に参与はしていない──などと主張していました。

 これに対して第一審の台中地方裁判所は無罪判決を下しましたが、検察は、▽サーバーは定期的な維持が必要▽会社は2カ月ごとに税務処理を行わなければならず、銀行口座も台中市にある▽カスタマーサービスの電話番号も被告の自宅に設置されている──、これらのことから、被告は当然会社の業務に参与せざるを得ないことは明らかとして、控訴しました。

 第二審の知的財産裁判所は以下のような判断を行いました。

1. 被告の年齢と教育程度からすると、被告がインターネット企業において、インターネット上で「TWNCI」サイトを運営し、また顧客と接し、業務処理を行い、かつ「TWNCI」の文字が当該サイトのトップページに表示されている事実を認識していたとすると認めることはできない。

2. たとえ被告が網路世界公司にかかってきた電話に出ていた、または台湾でのサーバー設置に協力していた事実が認められるとしても、それだけでは被告の主観上に他者の商標権を侵害する故意があったことは証明することができない。

ネット案件には慎重な判決

 これらの案件から、裁判所はインターネットに関連する案件を判断する際にはかなり控えめになっていることが分かります。もちろん「無罪推定」や、「疑わしきは被告人の利益に」という原則はとても大切なものです。しかし、これらの案件に見られるような認定方法は、一般人の常識の範囲を超えたものであるように思えます。

徐宏昇弁護士事務所

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