【ワイズリサーチ】台湾自動車ブランドの発展(上)


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2013年11月21日

機械業界 自動車・二輪車

【ワイズリサーチ】台湾自動車ブランドの発展(上)

記事番号:T00062533

 台湾の自動車産業で自主的な研究開発(R&D)の機運が高まった1985年、経済部工業局は「自動車工業発展プラン」を公布し、自動車部品および完成車業界の競争力向上を促すべく、台湾メーカーが独自に設計した車体、シャシー、エンジンに対し、3%の貨物税(物品税)補助を支給すると発表した。これは世界貿易機関(WTO)への加盟を目指し、関税率を引き下げて自由競争の強化を図る中、R&Dの促進により独自技術の育成を促進する意味合いを持っていた。

 こういった政策を受けて海外の大手自動車メーカーは台湾にR&Dセンターを設置するようになり、新型車に台湾独自の改造を加えて付加価値を高めるとともに開発力を蓄積していった。裕隆汽車製造(ユーロン・モーター)は1981年に設立した工程センターを日産自動車の海外R&D拠点となる「アジア技術センター(YATC)」に昇格させ、「セントラ」や「セフィーロ」の台湾モデルの設計・開発を手がけた。また中華汽車工業(チャイナ・モーター)、福特六和汽車、国瑞汽車も相次いでR&Dセンターを設置し、▽フォード・モンデオM2000(福特)▽三菱バリカ(威利)(中華)▽トヨタコロナ・プレミオシーリズ(国瑞)——といった台湾仕様車を開発した。

 設計・開発の台湾現地化が進んだこと、および車両研究測試中心(ARTC)の検査体制にけん引される形で、板金部品、プラスチック部品、電機・電子部品といった協力メーカーを含めた台湾自動車業界全体の開発能力が向上していった。これが開発・設計人材の育成にもつながり、台湾における自主的な自動車開発力はその厚みを増していった。

 図1を見ると、関税率の低下とともに台湾生産車のシェアも低下していることがうかがえる。ただ、台湾メーカーが独自に設計した車体、シャシー、エンジンに対する3%の貨物税補助支給が始まった1985年以降、台湾生産車のシェアは急激に上向いている。さらに各自動車メーカーがR&Dセンター設立して自主開発を進めた結果、完成車、部品を含む台湾自動車産業の生産額と就業率は相次いで最高を更新。生産台数は2005年に44万6,000台に達した。

 

台湾ブランドの誕生と発展:「IA計画」の推進



 政策の後押しを受け、台湾の自動車産業は▽部品開発▽先進カーエレクトロニクス開発▽車両の組み立て――といった分野で高度な蓄積を進めた。また、協力メーカーが相次いで国際認証を取得したことでグローバルブランド向けOEM(相手先ブランドによる生産)、ODM(相手先ブランドで設計から製造までを担当)業務を担う能力を備えるに至っている。動力装置分野では華擎機械工業(チャイナ・エンジン)が安定した成長を見せているほか、ARTCも国内自動車産業の発展とともに体制を強化していった。

 ただ、当時の国際情勢および産業環境においては、受託生産がボトルネックに直面し、世界大手メーカーが技術と利益を掌握する状態となっていた。このため台湾の自動車産業は優れた分業体制と製造力を有しながら、海外市場で勢力を拡大することは難しく、他ブランドの受託業務を請け負うにとどまり、展開も小規模な国内市場に限られていた。突き詰めて考えると、その根本的な原因は台湾の自動車産業が真のブランドを有しておらず、独力で製品を生み出していないことにあった。

 台湾が誇るIT産業では2005年、世界的な経済情勢に応じ、中国への工場移転が相次いだ。このため政府も同産業における過去の成功を再現すべく次世代の発展計画を模索し始めた。IT産業の影響は個人、家庭、オフィスなど多岐にわたるが、台湾のIT技術を活かせる新たなプラットフォームを検討した結果、自動車産業が最良の選択肢と考えられた。これにより政府は3C(コンピュータ、通信、家電)産業に続く「第4のC(Car…PCとカーエレクトロニクスの融合)」産業の推進を決め、「IT+AUTO」を意味する「IA計画」が立ち上げられた。図2に同計画の戦略目標と産業としての価値を示す。

 行政院経済部は2005年、▽独自開発▽台湾ブランド創設▽産業効果▽台湾での発展——の4大目標を掲げた「自動車完成車・独自技術育成プロジェクト」を始動させた。同プロジェクトでは、独自開発を通じて台湾ブランドを創設し、関連するバリューチェーンのアップグレードを促すとともに核心技術を台湾に根付かせることが期待された。


 同時に電子、IT、通信といった、台湾が強みとするハイテク産業を引き込み、自動車産業の構造転換および開発力の向上を図るためのプラットフォームを立ち上げ、これによりIT、自動車両産業の発展につなげ、自動車産業におけるスマイルカーブの両端に当たるR&Dとブランド展開に注力する姿勢を示した。なお、既存の自動車産業のバリューチェーンとハイテク産業の統合により「第4のC」産業を創造し、「ウィンウィン」を実現することには、異業種間協力のモデルケースとしたいという狙いが込められていた。

 経済部技術処の指導の下、裕隆集団がオリジナルブランド車の開発計画を担う華創車電技術中心を設立し、▽宏達国際電子(HTC)▽大億交通工業製造▽全興創新科技▽漢翔航空工業(AIDC)▽華擎機械▽永彰機電——といった関連業者や、▽ARTC▽工業技術研究院(工研院)▽金属工業研究発展中心(金属センター、MIRDC)▽中央研究院▽台湾大学▽台北科技大学——といった研究機関との協力を積極的に進めた。その後、華創車電が主導権を握り、産業統合および異業種間提携を通じた垂直統合を実現する自動車開発プラットフォームを構築(図3参照)。オリジナルブランドによる▽多目的車(MPV)▽SUV(スポーツ用多目的車)▽セダン――の開発に取り組んだ。

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