記事番号:T00113836
2024年1月13日に行われた台湾総統選挙の結果を受けて、業界では今後の中台関係が伝統的産業に与える影響が取りざたされているが、特に海外メディアとマーケットは半導体産業が直面する経営環境の変化に注目している。特に半導体産業の▽輸出額▽貿易収支▽資本支出▽利益▽1人当たり平均所得▽時価総額と言った指標で、これらの動向が台湾経済や資本市場に大きな影響を与えるためだ。
2023年の比率で行くと半導体産業は、▽輸出全体の40%▽貿易収支の53%▽民間投資における資本支出の20%以上▽国内総生産(GDP)の12%を占める。また上場企業時価総額の約38%を占めて台湾株式市場における最大勢力となっている。このほか、台湾から供給される先進プロセスもテクノロジー産業における台湾の地位を圧倒的なものとしている。
総統選挙前には米ブルームバーグ・エコノミクスが、台湾海峡有事が発生した場合、全世界GDPの10%に当たる10兆米ドルの経済損失が発生すると試算している。これは▽ロシアによるウクライナ侵略▽新型コロナウイルスの世界的まん延▽リーマンショックのような金融危機を上回る規模で、台湾が半導体供給で世界2位という重要性の裏返しでもある。また台湾情報通信技術(ICT)業界も世界的に一定の地位を獲得している。このため、今回行われた総統選挙の結果が半導体産業に与える影響をマーケットは注目し、外国メディアは総統選後の国際記者会見で質問を集中させた。
日台米の半導体産業による協力関係は競争以上の意味を持つ
半導体産業は世界的競争が行われる業界だ。そのため総統選挙の影響はあまり受けず、どちらかと言えば米中ハイテク戦争の動向によってグローバルな経営環境が左右される。米国は依然として機械設備、最重要の中核チップ、EDA(電子設計自動化)ツールと言った半導体産業の重要ファクターを握っており、台湾は米国陣営として現時点では対中国メンバーの一員でいる。また、選挙結果を受けて今後も台湾と日本の良好な関係は変わらず、半導体産業でも日台は競争より協力関係が先行している。ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場が24年2月下旬にも開所式が行われる予定で、短期的に見ればこれもTSMCの海外展開が順調に行っていると見てよいだろう。
半導体産業に助成を継続し、工場拡張時のインフラ・人材不足解決を
台湾半導体産業は世界的に優位な競争力を持っている。台湾政府は今後も半導体産業の核心的競争力の育成を進めていくと見られる。また当該産業は他の重要産業を盛り立てる中心的存在としての役割も期待できる。さらに台湾半導体企業は海外展開を進める一方で、国内も重点的に開拓している。そのため政府は半導体企業が工場拡張をする際のインフラ建設や、水・電気供給などの問題をサポートする必要がある。
このほか、世界的に半導体製造拠点の分散やサプライチェーンを自国内で完結させる重要性に意識が行っている。このため、将来的に半導体産業における台湾の重要性が揺らぐ可能性がある。また中長期的には、台湾が世界的な半導体バリューチェーンでの役割をいかに維持し続けるべきか。人材不足はどのように解消するのか。こうした問題は産官学が真剣に考えるべき重要な問題となるだろう。良質な理工系人材の供給が台湾の半導体産業が今後も持続的に成長できるかどうかの重要なポイントとなるだろう。
一方、半導体産業は生産過程で膨大な二酸化炭素を放出し、大量の水資源を消費し、数多くの危険な廃棄物を生み出す。そのため、半導体企業は世界的なESG(環境、社会、ガバナンス)、永続発展、グリーン関連の先行指標となる。国内外の半導体企業は企業の永続的発展のためにESGに積極的に取り組んでおり、その計画と結果はマーケットの注目を集めるだろう。特に国家発展委員会は、2050年の温室効果ガスのネットゼロに向けたロードマップと戦略を発表している。このため将来、政府は台湾半導体メーカーのサポートを行ったり、エコ関連の見えない競争力構築を行うだろう。
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