記事番号:T00109832
ワイヤーハーネス(自動車用組電線)大手の貿聯国際(ビズリンク・インターナショナル)は2022年、独レオニの産業用応用事業部門の買収を完了した。買収額は20年売上高の60%以上に相当する規模だ。この買収により、消費者向け電子製品の需要鈍化の影響を回避し、22年売上高は500億台湾元を上回って過去最高を更新した。
産業用コンピューター事業の売上高構成比が約40%に
ビズリンクは世界33カ所に工場を持つ。23年にマレーシアで開いた戦略会議には、レオニの産業用応用事業部門から改称した「INBG」の幹部が初めて出席した。ビズリンクは電気自動車(EV)世界最大手、テスラのサプライヤーとして知られていた。22年1月にINBGを買収したことで、22年の連結売上高は前年比88%増の537億5700万元となり、初めて500億元を上回った。
ビズリンクの事業別の売上高構成比は従来、▽情報技術(IT)・データセンター、34%、▽電子機器、28%、▽車載、約20%、▽産業、約20%だったが、INBGの買収後は産業用コンピューター(IPC)事業の売上高構成比が約40%に上昇した。消費者向け電子製品の需要は景気変動の影響を受けやすいが、多品種少量生産を特徴とする産業向け製品の需要は安定している。ビズリンクはINBGの買収により、22年の消費者向け電子製品の需要鈍化という影響を回避することができたのだ。
海外企業の買収で顧客獲得
ビズリンクは21年、経営危機に直面していたレオニの黒字事業だったINBGの買収に名乗りを上げた。ビズリンクは創業以来、海外企業の買収を通じて新たな顧客と市場を獲得してきており、17年にはレオニのワイヤーハーネス事業を買収して英家電大手ダイソンなどの顧客を獲得した。20年にはシンガポールの同業、スピーディー・インダストリアル・サプライズを買収して半導体設備向け事業を強化した。
INBGの買収額は、ビズリンクの20年売上高の60%以上に相当する規模だった。また、買収に当たっては、同じく名乗りを上げていた欧米の企業やファンドと張り合いつつ、コロナ禍の中で半年以内に買収手続きを完了する必要があった。
欧米の工場獲得で供給体制強化
ビズリンクは過去に、▽台湾初の事務所設立、▽中国広東省深圳市での工場取得、▽米国本部の設立を2年以内に実現したことがあるが、今回の買収はコロナ禍で現地の工場を視察できず、オンライン会議に頼るしかない状況で半年以内に完了させるという困難なものだった。
地政学的リスクが高まる中、ビズリンクは欧州と北米に15基の工場を持つINBGを買収したことで、一部の顧客に近い場所から製品を供給できるようになった。また、INBGの▽半導体、▽サーバー、▽医療、▽国防、▽極限環境向けの高い技術力と独シーメンスなどの大手顧客を獲得することにも成功した。
INBGから経営マネジメントを学習
INBGの買収後、ビズリンクの工場は▽東アジア、▽東南アジア、▽欧州、▽北米に広がり、欧州が最大の生産拠点となった。売上高も大幅に増加し、ビズリンクは今やグローバル大企業だ。
ビズリンクはINBGから経営・財務マネジメントについても多くを学んだ。INBGには以前から、コンサルティング会社出身の優秀な人材が多かったのだ。
ビズリンクはマレーシアでの戦略会議で「ワンチーム・ワンゴール」を目標に掲げた。INBGの買収を今後も成長につなげられるか。梁華哲・董事長は「グループ全体で相乗効果を発揮できるかが次の課題だ」と語った。
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