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【ワイズリサーチ】成長期を迎えた航空宇宙業界の
産業動向および技術開発


リサーチ 経営 台湾事情 作成日:2014年8月7日

機械業界 航空宇宙

【ワイズリサーチ】成長期を迎えた航空宇宙業界の
産業動向および技術開発

記事番号:T00062683

一.基本紹介

 世界経済は金融危機と欧州債務問題の影響を受け、各業界いずれも不景気に見舞われている中、唯一航空宇宙産業が好調である。石油価格の高騰、環境保護意識の変化、さらに格安航空会社(LCC)の台頭によって航空機に対する需要が高まっていることから、ボーイングやエアバスなど航空機メーカ―の受注残高は7年間分の生産量に達している。

 2013年、ドイツ・ハノーバー国際見本市会場で行われたセミナーの最新データによれば、2012〜32年の20年間で民間航空機の世界市場規模は26,000機を上回ると予測されている。エアバスとボーイングに対する需要はそれぞれ4.4兆米ドルと4.8兆米ドルに達するという。単通路(シングルアイル)・短距離向け小型機の需要量は約18,000機で、今後アジアが最大市場に成長する見通しだ。

 台湾航空宇宙産業の現状と未来の発展に関し、経済部は▽国際サプライチェーンにおける地位の向上▽ニッチ型航空部品の開発▽アジア太平洋市場の開拓と世界全域への市場拡大▽航空技術を応用した高付加価値製品とサービスの開発——という4つを柱とした産業促進計画を打ち出している。

 台湾の航空産業は直近3年間で毎年約10%の成長率を維持している。13年の生産額は832億台湾元で、過去最高記録を更新した。15年には1,000億台湾元まで成長すると予想されている。

 また経済部の推進計画を通じて、台湾航空産業の各社はボーイング、エアバス、ゼネラル・エレクトリック、ロールスロイスなど世界大手航空宇宙関連企業の認証を取得し、5年以上の中長期受注を獲得している。

二.台湾の業界状況

 台湾の航空業界はエアフレーム、エンジン、電子部品などの製造、内装やメンテナンスといった分野に進出しており、世界の大手航空宇宙関連企業の認証も取得している。今後は新技術を引き続き導入し、関連産業の技術・製品の品質向上を図り、市場競争力を強化を目指す。台湾の航空産業各社が相次いで中長期発注を取得したことを受けて、航空機のメンテナンスと製造を行う長栄航太科技(エバーグリンーン・アビエーション・テクノロジーズ)は桃園県観音郷にエアフレーム組立とエンジン部品製造を主要業務とする工場を設立している。

 現在、台湾区航太工業同業公会(航空宇宙産業組合)は漢翔航空工業(AIDC)を中心に、中衛体系(大規模メーカーを中心とし、多くの中小メーカーが分業で生産を担う体系)を組織している。さらに近年は台湾政府が積極的に中国との交流を推進しているため、今後台湾と中国は航空機の内装、メンテナンス、製造サプライチェーンで協力していくこととなるだろう。また製品の検証などの分野でも相互提携の可能性があるとみられる。

 一方、工業技術研究院も2010年に台湾精製産業研発聯盟を設立した。これには航空宇宙部品メーカーの宝一科技(エアロー・ウィン)、駐龍精密機械(DPI)、晟田科技工業(マグネイト)、鍛造専門メーカーの富成金属科技(フルチャンプ)、特殊鋼・超合金の大手メーカーの栄剛材料科技(GMTC)、チタン合金メーカーの精剛精密科技(STC)などが参加しており、材料とキーテクノロジーの開発を進めている。国際航空産業に対して川上部品から川中部品までの「ワンストップショッピング」を提供することで、台湾メーカーが世界規模のサプライチェーンへ参入することを目指す。将来的には最新テクノロジーを大手工作機械メーカーが導入することにより、航空宇宙産業全体を向上させることとなるだろう。

三.現行のキーテクノロジー

 航空宇宙製品の部品は軽量であることに加えて高剛性、高信頼性といった特性が求められる。さらに加工工程の振動が大きいため、設備製造メーカーはエンドユーザーが加工時に用いる工具と機械の振動、加工される部品についてよく検討しなければならない。アルミニウム、チタン・ニッケル合金を使用する部品は、材質やサイズ、様式などが大きく異なるため、加工設備の速度、加減速、剛性、構成、主軸トルクなどもそれぞれ素材の特性に応じて設計されており高度な専用化が進んでいる。

航空宇宙用製品の製造設備は高い安定性と効率性が要求され、その基準を満たした工作機械は高価格であるため、世界の大手工作機械メーカーがこぞって参入している。2013年にドイツ・ハノーバー国際見本市会場で展示されたキーテクノロジーは、主に高効率の加工設備と応用技術、インテリジェント化による機能向上を含む2つの分野に分かれた。

▽高効率の加工設備と応用技術
1.高加減速で軽量な構造
例:MAG社が発表した高剛性かつ高加減速(>0.7G)である横型機種。

2.安定性が高い切削機械設計
例:牧野フライス製作所、Starrag、Hellerの3社は事前に切削効率を把握できる設計法を採用している。

3.主軸トルクの倍増技術
例:牧野フライス製作所は動剛性を逆算して主軸の回転速度を500Nm(ニュートンメートル)から1,000Nmまで倍増させ、チタン合金の切断に必要な数値の4倍にまで引き上げた。

4.マシニングセンターの高圧・液体窒素冷却技術
例:牧野フライス製作所とMAG社はそれぞれ、高圧冷却、特殊鉱油、液体窒素でマシニングセンターを冷却させ、工具の摩耗を低減させて寿命を延ばす技術を用いている。

5.送り速度の調整による切削負荷の最適化
例:モジュールを使用して工具が切削した面の物理的特性を計算することで、加工する前に切削力の変化を把握し、切削能力を安定させて加工の効率を向上させる。

▽インテリジェント化による機能向上

1.シーメンズとDMG森精機が採用しているオンライン切削シミュレーションと衝突防止技術。

2.ヤマザキマザックと川崎重工業によるインテリジェント化工具摩耗監視制御システム。

3.オークマとDMG森精機が採用しているオンラインびびり抑制システム。
 

四.航空宇宙技術の今後

 加工工程の総コストは、主に▽工作機械▽工具▽機械切削パラメータ▽材料——に分類される。航空宇宙用製品の場合は、部品・材料の費用が少なくとも150~200万台湾元はかかるため、加工時間の短縮が有効なコストダウンに繋がる。インテリジェント化による機能向上のほかに、金属切削の原理から改善を図ることもできるだろう。切削状態を分析して加工プロセスを最適化すれば、エンドユーザーは設備、部品、ツールパスを変更することなく効率を向上させることができる。

 現在の工作機械の最大加工効率には、モータートルクと工具の寿命、「びびり」現象が影響する。工業技術研究院はカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のデジタル製造シミュレーション技術を導入し、エンドユーザーが適切な回転速度と深さで加工し、びびりを回避できるようにしている。

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