DRAM最大手、力晶半導体(PSC)の黄崇仁董事長は8日、第4四半期から標準型DRAMを10~15%減産すると発表した。同社の減産実施は創業18年で初めてで、供給過剰による赤字が続く中、厳しい判断を迫られた。これまでの報道によると、エルピーダメモリやサムスン電子は他社の淘汰(とうた)を視野に増産を行う意向とされている。力晶は減産で市況回復効果を期待するものの一歩退いた形で、世界のDRAM業界の生存競争が強弱を決定づける段階に入ったことを示唆する動きとうかがえる。9日付工商時報などが報じた。
DRAM市場は供給過剰で低迷が続き、力晶は今年上半期に170億1,600万台湾元(約577億円)の赤字を計上。黄董事長は今年を「創業以来最悪の1年」と評している。
減産は中部科学工業園区(中科)にある12インチ工場(通称12A工場)を中心に行う計画だ。減産と引き換えに、1年以内に非メモリー半導体の割合を30%まで引き上げる予定。エルピーダメモリとの合弁DRAMメーカー、12インチウエハーで月産能力8万枚の瑞晶電子(レックスチップエレクトロニクス)も減産行うかどうかは、今後エルピーダと協議して決める。
また、新竹科学工業園区(竹科)に建設中の12インチ工場「P4」と「P5」については、生産設備搬入と稼働時期を6カ月延期する。
他社は減産計画なし
黄董事長は減産について、「生産コストが業界最低水準で、業界最先端の50ナノメートル製造プロセスを利用しても、利益が出ないというのは正常な状態ではない」と指摘。その上で、「12インチ換算の生産能力が世界全体の3分の1以上を占める台湾業界が減産することで、市場の正常化が図れる」とし、台湾の業界他者にも減産を呼び掛けた。
黄董事長はまた、力晶と瑞晶の生産能力で台湾DRAM業界全体の半分を占めており、自身が台湾半導体産業協会(TSIA)理事長の立場にあることが、先陣を切って減産を決断した理由だとも強調した。供給の引き締めに成功すれば、早ければ来年中旬には価格が回復すると強気の予測も示した。
しかし、茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)、南亜科技、華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の3社は、現段階で減産の計画はないと表明した。
北京五輪後、回復みられず
黄同社董事長によると、DRAM市場は現在、5~10%の供給過剰に陥っている。以前は北京五輪後に需要が回復すると予測していたが、実際には需要が伸びないばかりか、サムスン電子、ハイニックスなどが在庫を大量に安く処分したため市況がさらに悪化した。黄董事長は、「現在の市場は『儲からない』という次元ではなく『生き残れるか』が試される状況になっている」という厳しい認識を示した。