中国で有害物質メラミンの入った粉ミルクが出回り乳児3人が死亡した事態を受けて、行政院は16日、▽中国で乳製品の生産を行っているか、中国から原料を輸入している域内17社に対する台湾での販売一時禁止措置▽中国当局によってメラミン含有が確認された22社の製品の輸入禁止──を決定した。度重なる有害食品事件によって中国製食品の信頼性は地に落ちており、食品の安全性を求める消費者世論が今後さらに高まりそうだ。
三鹿集団製の『毒粉ミルク』。台北県政府は17日、販売店や倉庫から計59袋、1,200キロ余りを回収し焼却処分した(17日=中央社)
行政院衛生署の蕭東銘食品衛生処長によると、一時販売禁止措置の対象メーカーは中国で製品の安全確認を受けているが、不安感の高まりを背景に慎重を期す。17社には大手、台湾ネスレも含まれていたが、同社は直ちに台湾の安全検査に合格していることを表明し、衛生署は販売禁止措置を撤回した。しかし同社は「一昨日だけでも600件の問い合わせを受けた。販売への影響は避けられない」と話している。同社の粉ミルクを販売している丁丁薬局の許耀鴻総経理は、「多くの消費者から返品したいという電話を受けた。安全検査を通過したと説明しても理解を得られなかった」と語った。
衛生署では、製品の安全検査の結果、メラミンが含まれていないことが分かれば、販売禁止措置を解除するとしている。
三鹿以外は輸入なし
メラミン含有が確認された中国メーカー22社には、今回の事件を起こした乳製品大手、三鹿集団(河北省石家荘市)のほか、蒙牛集団、伊利集団などの有名メーカーも含まれる。衛生署によると、三鹿以外の21社の製品は台湾に輸入されていないが、対策に万全を期するために輸入禁止措置をとった。
なお、粉ミルクのメラミン含有量は、三鹿が1キロ当たり2,563ミリグラムと突出して多く、2番目に多い上海熊猫乳品は同619ミリグラム、3番目の青島聖元乳業は同150ミリグラムなどとなっている。食品安全の専門家によると、乳児の最大許容度は最大で1キロ当たり15ミリグラムで、22社中15社までがこの水準を上回っている。
2社に罰金処分
三鹿の有害粉ミルクは25トンが台湾に輸入され、一部が既に消費者の口に入ったとみられているが、衛生署は17日、台北県の旺達公司と桃園県の台威公司が計285袋(1袋約25キロ)の販売先を明らかにしないとして、食品衛生管理法の規定に基づいてそれぞれ15万台湾元(約49万円)の罰金を科すとともに、捜査当局に刑事事件として捜査を要請した。板橋地方検察署は近く、旺達の捜索や責任者への聴取を行うとしている。
中国当局、情報隠しか
中国衛生部によると、有害粉ミルクを飲用して腎結石を発症して死亡した乳児は既に3人、患者は6,244人で、このうち158人が急性腎不全に陥っている。
極めて重大な事態でありながら、中国当局は北京五輪を成功裏に終えるため、情報隠しを行っていた疑いが浮上している。18日自由時報は、楊崇勇河北省副省長による「五輪以前の段階で通報を得ていたが1カ月以上隠していた。三鹿集団の情報隠しの期間はさらに長い」という発言を報じた。
台湾の消費者は今回の問題を通じて、利益やメンツのために健康と人命をないがしろにすることがある中国社会の体質に改めて不信感を募らせており、「毒入り冷凍餃子事件」発生直後の日本の状況をほうふつとさせる。18日蘋果日報は「Made in Chinaの食品は絶対口にしない」「政府は安全検査を厳格化すべきだ」といった消費者の声を紹介している。