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「経営の神様」、王永慶氏が死去


ニュース その他分野 作成日:2008年10月16日_記事番号:T00010938

「経営の神様」、王永慶氏が死去

 
 「台湾の松下幸之助」「経営の神様」などの異名を持つ台塑集団(台湾プラスチックグループ)創業者、王永慶氏が15日午前9時38分(米国東部時間)、心肺不全により米ニュージャージー州の病院で死去した。91才だった。貧しい家庭に育ちながら一代で台プラを世界屈指の石化グループに育て上げた王氏の訃報に、劉兆玄行政院長や総統府も哀悼の意を表明した。王氏の遺体はきょう(16日)夜、米国を出発し長栄航空(エバー航空)の専用機で台湾に戻る。
 
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今年5月、アモイ長庚医院のオープン式典に出席した王永慶氏。早くから中国に進出し、直航の早期開放など中台交流の積極論者でもあった(中央社)
 
 台湾各メディアの報道によると、王永慶氏は夫人とともに11日から同グループの米国工場の視察に訪れていたが、15日になって突然呼吸不全に陥り、病院に緊急に移送されたという。同氏の米国訪問は、世界金融危機による現地傘下企業への影響を懸念し、さらに最近流れていた健康不安説を打ち消すためだったとされる。
 
 台塑集団は16日、創業者の死去を受けて、王永慶氏のおいの王文淵総裁をはじめとする後継者7人からなる政策決定チームが緊急会議を開き、午前10時10分に「王永慶は睡眠中に安らかに永眠した」と発表した上で、「台プラグループの経営権は既に後継者に委譲されており、今後は7人が協力して創業者王永慶の勤勉かつ実直な精神を守り、グループの業績向上を図る」とする声明を出した。
 
54年間で従業員7万人に
  
 1917年、台北県新店に生まれた王永慶氏は、16才で父親から借りた資金を元手に米屋を開業した後、レンガ工場、材木商などを経て1954年に台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)を創設した。その後「台プラの4宝」と呼ばれる南亜塑膠工業(南亜プラスチック)、台湾化学繊維(フォルモサ・ケミカルズ&ファイバー、台化)、台塑石化(フォルモサ・ペトロケミカル)の設立をはじめ、次々と事業を拡大し、現在では石化のほか、電子、医療、自動車、エネルギー、バイオテクノロジー、リサイクル業など進出領域は多岐にわたっている。
 
 創業54年を経て、グループが抱える従業員は7万人以上、年間売上高は約2兆台湾元近く、07年の純利益は2,190億7,700元(約6,750億円)と台湾の民間企業最高となるまでに成長している。
 
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10年かけて引き継ぎ完成
 
 絶大な影響力を持つ創業者の死去のニュースが報じられるや、台プラグループ各社の株価は一挙にストップ安まで下落した。しかし王永慶氏は10年をかけて息子や娘たちへの権限引き継ぎを進め、グループ董事長の座を退いた2006年6月段階で経営権は完全に次の世代に委譲されており、死去による実務上の影響はないとみられる。ただ、王永慶氏は引退後も企業の方向性の決定に大きなリーダーシップを発揮しており、今後こうした役割をどのように補うかがグループの課題となりそうだ。
 
 王永慶氏は高齢ながら最近もベトナムで進められる製鉄所建設の視察に訪れるなど、グループが重視する事業関連の活動を精力的に行っており、最後まで事業の発展に尽力した。
 
 
(参照)弊社コラム「台湾流経営策略 第15回 台塑集団創業者 王永慶氏」
http://www.ys-consulting.com.tw/column/index.php?action=1&tno=4354