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作成日:2008年10月20日_記事番号:T00010972
きっかけは実在の郵便配達人、「海角七号」創作秘話
上映2カ月で興行収入が4億台湾元(約12億5,000万円)を突破し、台湾映画界久々の大ヒットとなった「海角七号」。そのモチーフとなっているのは、敗戦後台湾を去った日本人教師が台湾人女学生につづった7通のラブレターだ。映画は、60年の歳月を経て届けられることになったラブレターを軸に、過去と現在の物語が交錯する。
実は、魏徳聖監督にこの映画を創作するインスピレーションを与えたのは、実在のベテラン郵便配達人だったということをご存知だろうか?1968年から今年7月に退職するまで、雲林県台西郵便局で40年間勤務した丁滄源さんがその人だ。
丁さんは4年前、配達不能な迷子郵便物を担当していた際、1通の手紙に遭遇した。それは大阪の関西電力からの手紙で、宛先は「台湾台南州虎尾郡海口庄海口145之1号」、受取人は「陣キ炎(キはしめすへんに其)」となっていた。
日本統治時代の台南州虎尾郡海口庄は、現在の雲林県台西郷に当たる。しかし、60年もの時間がたち、宛先の旧住所は既になかった。手紙は本来なら日本に返送されるはずだったが、丁さんは仕事の合間や退勤後の時間を利用して受取人を探し続けた。
その結果、受取人は「陣キ炎」ではなく「陳キ炎」で既に他界したが、息子の陳飛鵬さんが雲林県虎尾鎮に健在であることが判明。手紙を受け取った飛鵬さんは涙を浮かべて喜んだという。ちなみに、手紙の中身は株式配当金47円だったそうだ。
丁さんによれば、この出来事が報じられたニュースでは2年もかけて手紙を届けたと報道されたが、実際には2日間だったという。台湾映画史上空前の大ヒット作が生まれたのは、いいかげんな報道のおかげだったとは魏監督も感慨深いに違いない。