陳水扁前総統をめぐる資金洗浄疑惑を捜査している最高検察署特別偵査組(特捜部)は17日、陳前総統夫人の呉淑珍被告(横領罪などで起訴済み)の海外にある借名口座や中米ベリーズに設立されたペーパーカンパニーの口座に大手金融機関に絡む不明朗資金3億台湾元(約9億4,000万円)余りが見つかったとして、中国信託金融控股、元大金融控股、中華開発金融控股の3社と兆豊金融控股の鄭深池前董事長の自宅など関係先を一斉に家宅捜索した。また、鄭前董事長らに出頭を求め、任意で取り調べを行った。19日付中国時報などが伝えた。
このうち、鄭前董事長は取り調べに対し、「資金洗浄疑惑が浮上後、いつかはこの日が来ると思っていた」と述べ、呉被告の指示を受け、陳前総統一家による小分けの海外送金に協力していたことを明確に供述した。検察側は鄭前董事長に口座照会同意書への署名を求めた上で、関係口座に対する調査を進める方針だ。検察は鄭前董事長が関与を否定した場合、逮捕も辞さない方針だったが、取り調べに協力的である点を考慮し、身柄拘束は見送った。
一方、元大集団の馬維建総経理、馬維辰営運長の兄弟も19日、検察による事情聴取を受けた。これについて、元大金控は馬氏兄弟から陳前総統サイドに渡ったとされる18万米ドル(約600万元)の資金は「馬氏兄弟による個人的な資金支出で、元大金控とその子会社とは関係ない」とのコメントを出した。
検察はこのほか、現在海外にいる中国信託の辜濂松董事長からも後日事情聴取を行う方針だ。
今回の一斉捜索について特捜部の陳雲南報道官は、「第2次金融改革や中華開発の経営権争いとは無関係だ」と述べた。しかし、関係筋によれば、中国信託が2006年に兆豊金控に出資した際、辜氏一族が呉被告と接触していたとの情報などを基に、検察は陳前総統と金融機関の間に贈収賄や政治献金などがあったかどうかについて調べを進めている。
検察によると、陳前総統一家はベリーズ、モーリシャス、英領ジャージー島、英領バージン諸島などの租税回避地にペーパーカンパニーを設立していた。