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中国幹部への暴行事件、世論は反発


ニュース 政治 作成日:2008年10月22日_記事番号:T00011059

中国幹部への暴行事件、世論は反発

 
 中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)の張銘清副会長が21日、台南市で独立派の市民に囲まれ地面に突き倒された事件が世論の反発を呼んでいる。反中感情を暴力で表現することは民主主義をおとしめ、中台交流にも影響が出る懸念があるためだ。「一つの中国」路線を明確にした馬英九政権の登場で住民の台湾意識はかえって高まっているものの、安定した中台関係を望む民意が共存しており、極端な行動には拒否反応が示される。今回の事件は、進む対中交流と、それを将来の統一への布石と反発する一方の民意との摩擦が表層化したものといえる。
 
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混乱の中で倒される張銘清副会長。眼鏡もはじけ飛んだ
(21日=中央社)
 
 張副会長は22日午前、24日までを予定していた台湾滞在予定を切り上げ、高雄空港から中国に帰国した。離台に当たって、「暴力は台湾民衆の総意を表すものではないと信じている。こうした手段で、得難い好局面にある両岸(中台)関係に影響を及ぼそうとしてもうまくいかない」と強調した。

 総統府は21日の事件発生直後に緊急会議を召集。事件を「偶発的なもので、陳雲林会長の来台や今後の両岸関係に影響しない」と位置付け、王郁琦報道官が暴力を非難する声明を発表した。

 しかし22日経済日報によると、政府上層部は事件を受けて、陳会長の訪台を11月上旬へと延期し、南部訪問は中止することを決めたという。

 陳会長訪台で行われる中台公式協議では、▽海運直航便の就航▽週末チャーター便の増便・中国側の就航拠点増設▽貨物直航便の実現▽郵便の直接往来▽食品の安全メカニズム確立──などの議題が協議される予定だった。仮に協議スケジュールが遅れるようであれば、台湾側は実質的なデメリットを被ることになる。

批判が7割
 
 22日付蘋果日報によると、同紙が実施した電話によるアンケート調査(サンプル数659)では、「恥ずかしい振る舞い」など暴行事件を批判する意見が68.74%と大部分を占めた。「よくやった」など抗議を称賛する意見は17.75%にとどまった。

 同紙の街頭インタビューでは「台湾人は民主の素養がないと外国から思われてしまう(29歳・女性)」など台湾のイメージ悪化を懸念するものや、「暴力は行き過ぎ(45歳・女性)」などが代表的な意見で、このほか「抗議はデモで示せばいい。張副会長への暴力は台湾の安全に影響する(21歳・男性)」という意見もあった。

蔡主席が遺憾の意
 
 事件で現場の孔子廟で抗議を先導し、もみ合いの中で背中で張副会長を押し倒してしまったのは民進党の王定宇市議会議員で、張副会長の車の上に飛び乗って屋根を踏みつけた男も、民進党のシンボルカラーである緑のはちまきを着けていた。

 民進党は今週25日、馬英九政権の「対中傾斜路線」への大規模な抗議デモを行う。デモが過激なイメージと結び付けられることを避けるべく、蔡英文同党主席は直ちに事件への遺憾の意を示した。しかし、同党の立法委員からは、「汚染粉ミルク事件といい、台湾に向けたミサイルといい、こうした人物(張副会長)はわれわれの敵であり、敵を客扱いする者はいない」という抗議行動を支持する声も上がった。

 反中感情を基盤にした民進党にとって、事件は「中国との関係の築き方」という長年の課題を浮き彫りにした面もある。経済関係が深まった現在、対中交流の重要性は広く認識されている。民進党は理念と現実の間で混迷を長引かせる可能性がある。