中国の対台湾窓口機関、海峡両岸関係協会(海協会)の陳雲林会長の訪台と台北での中台公式協議は、11月3日に行われる見通しとなった。張銘清海協会副会長が台南市で暴行を受けた事件によって協議日程の延期はしないものの、陳会長の訪台日は民進党の大規模デモの影響を避けるため、当初予定の10月27日から1週間遅らせることにした。ただ、民進党は陳会長訪台に合わせて3日連続の抗議活動を計画しており、中台協議は厳戒態勢の中で行われることになりそうだ。
北京に到着した張銘清海協会副会長(右)を出迎えた陳雲林会長(左)。
「極めて少数の者が両岸(中台)
の正常な交流を破壊しようとして
も、人心を得られない」と強調した(23日=中央社)
23日付中国時報によると、現在公式協議を前に深圳で中台双方の実務担当者による予備折衝が行われており、週末直航便の便数拡大などの協議テーマで具体的な結論が出次第、11月3日の公式協議実施を宣言する。
最高水準の警備体制
張副会長が独立派の市民から暴行を受けた事件は、
中国政府関係者に対する警備の課題を浮き彫りにした。同事件では台南市の陳富祥警察局長が更迭処分に遭った。
王卓鈞内政部警政署長は陳会長来台時の警備について、「警戒レベルは外国の元首の訪台時より厳しくなる。万に一つの遺漏もない、水一滴も漏らさないつもりだ」と語っている。警備担当者が終日身辺を警護するほか、日中のスケジュールや滞在ホテルで安全を守るため、機動的に警察力を投入する。突発的事態に懸念
陳会長の訪台日程が直前まで公表されないのは独立派に抗議活動の準備をさせないのが最大の目的だが、民進党は抗議の姿勢を強めている。鄭文燦同党文宣部主任は22日、陳会長の来台に合わせて3日連続、夜を徹しての抗議活動を行うと表明した。
民進党雲林県党部も「雲林人は陳雲林に抗議する」として党職員など20人からなる「雲林義勇軍」を結成。「陳雲林が雲林に来た場合、つきまとって台湾人の声を聞かせる」としている。
張副会長は結局、離台の際の高雄国際空港まで独立派の抗議を浴び続けた。また、同行していた中国の学者ら20人は23日中正大学(嘉義県民雄郷)のフォーラムに出席した際、会場の一部から罵声(ばせい)を浴びた。
民進党は暴力に訴えることはないと表明しているものの、治安当局は突発的な事態の発生を最も恐れているとみられる。
馬総統の対中姿勢に疑義
蔡英文民進党主席は23日、馬英九総統への質問として、▽総統選挙時の「台湾の前途は2,300万人民が決める」という発言を、なぜ就任後は行わないのか▽台湾は地域なのか主権国家なのか▽中国の汚染食品問題で、なぜ中国に賠償を要求しないのか──の3点を提示した。同党は、陳会長の訪台も馬政権の対中傾斜、ひいては将来の中台統一に向けた動きの一つとしてとらえている。
汚染粉ミルク事件も冷めやらず、馬政権の「一つの中国」路線に反発が高まる中、政府当局にとってはいかに不測の事態を防ぎ、歓迎ムードで中台協議を終えるかが課題となっている。